慶大が早大に快勝し、7季ぶり35度目のリーグ優勝を飾った。楽天からドラフト2位指名された「慶大のバレンティン」こと、岩見雅紀外野手(4年=比叡山)は1安打1四球。ノーアーチで慶大・高橋(現巨人監督)が持つリーグ記録の23本にあと2本届かなかったが、優勝にうれし涙を流した。早大は47年秋以来、70年ぶりの最下位が決まった。

 勝利の瞬間、岩見はベンチから巨体を揺らしながら、先頭で歓喜の輪に飛び込んだ。その目にはうっすら涙が浮かんだ。「泣かないかなと思ったんですが、ちょっと泣いてしまった。目指してきたものを達成すると、涙が出るほどうれしいんだと思った」。野球人生初のうれし涙に優勝への喜びが込められた。

 崖っぷちのチームを1発で救った。1敗すれば優勝争いから脱落する中、明大戦で2戦連発。前節からの連続本塁打を5試合に伸ばし、リーグ新記録を作った。本塁打記録の盛り上がりとともに、チームも破竹の6連勝。人生初の胴上げに「重いだろうなぁ」と110キロの体を持ち上げた仲間を笑顔で気遣った。

 大久保監督との二人三脚で素質が開花した。監督の妻のめぐみさんは、当時2年生だった岩見の話をする夫の輝いた目を今でも記憶する。三振が多かったが、同監督は「すごい打者になる」と熱弁。その目は社会人時代の教え子の田沢(マーリンズ)を語った時と同じだった。あれから2年、岩見は進化を遂げた。

 リーグ開幕前日の懇親会、岩見は「10本打って、記録を塗り替えたいです」と公言した。あと2本届かずも、12本で年間最多記録を更新した。「全国優勝できるのは学生まで。したいです」と明治神宮大会制覇を誓った。【久保賢吾】