13年の楽天日本一に大きく貢献した外国人選手2人も、星野氏を悼んだ。

 ジョーンズ とても偉大な方。日本の野球のことも、文化のことも、星野監督に教えて頂きました。

 マギー(現巨人) 野球界、そして世界が、星野さんがいなくなり少し後退してしまいました。星野さんには感謝の気持ちしかありません。私が地球上に生きている限り、星野さんも私の心の中で生き続けます。

 マギーは最初、星野監督が怖かったという。来日前に調べると「闘将」の逸話ばかり。だが、3月に外国人選手だけの食事会に呼ばれ、印象が大きく変わった。恐る恐る尋ねた。「『ミスター・ベースボール』の中日の監督は、星野監督がモデルなんですか?」。来日した大リーガーが主人公の映画。星野監督は「そうだよ」と笑顔で答え、話が弾んだ。威厳に満ちた外面とは正反対の気さくな人柄に触れた。心酔するきっかけの1つとなった。

 星野氏は、外国人選手との接し方について“極意”を残している。

 「配慮はするが、遠慮はしない」

 異国の苦労やメジャーのプライドを考慮しつつ、戦力としては日本人と同じように扱った。ジョーンズ、マギーの通訳を務めた佐野周平さん(32)も実感した。2人が試合前練習でグラウンドに出ると、星野監督は必ず声をかけてきた。「元気か? 女の子と飲んでるか?」。日常英会話は不自由しなかった。ひとしきり、やりとりが終わると、ちらっと佐野さんに目配せ。それが、合図だった。「今日の投手はチェンジアップだ。打てる球が来るまで待て。四球でもいいぞ」。込み入った話は、確実に伝えるために通訳を介した。

 「その会話がなくても、AJ(ジョーンズ)なら四球を選んで結果は同じだったかも知れません。でも、事前に言われることが大きかった」と佐野さん。ボスの指示があることで、迷いなくプレーできた。14年7月、ジョーンズは6試合だけ4番から3番になった。星野監督は事前に監督室に呼び、自分で通達した。状態が落ちた大砲に遠慮はしなかった。だが、メジャー通算434本塁打の実績には配慮した。

 星野氏の人心掌握術は外国人選手にも通じた。DNAは、国境を超えた。【古川真弥】