逆転の発想が、巻き返しへの道を切り開いた。21日、ヤクルト戸田球場での自主トレ後。由規投手(28)の表情には、確かな手応えがにじんでいた。「『下半身で力む』感覚で投げて、腕の力がいい意味で抜けてきた。納得いく球が多い。いい感じです」とうなずいた。

 ひと言の助言が契機だった。9年ぶりに参加した昨秋のみやざきフェニックスリーグ。高津2軍監督から「下で力め」と言われた。「全くなかった発想。そんなことを言われたのは初めてだった」。投球に限らず、運動動作に力みは禁物。リラックスした筋肉がスムーズな動きを生み、最大限の力を引き出す。逆説的な指示は、由規だからだったに違いない。

 13年に右肩を手術。復帰後も「上半身に余計な力を入れず、下半身を使う」意識では投げていた。それでも無意識の中で、患部をかばおうと必要以上の力が入ってしまう。それを払拭(ふっしょく)する方策が「下で力め」。下半身へ極端にイメージを集めることで、「上半身への意識が消えてきた」という。

 もちろん、実際に力み倒しているわけではない。この日のブルペン投球も、フォームの「バランスを確認しながら」35球を投じた。このオフのトレーニングで体重は約5キロ増量。尻周りの厚みも増した。パワーが増した下半身を使いこなすためにも、あらためて「正しい姿勢で投げること」を突き詰めている。

 「信頼を得ないと、中6日で投げさせてもらえない」。必ず開幕ローテ入りを果たし、勝ち星を重ねる-。11年目の発想転換。完全復活への土台は、着実に出来ている。【佐竹実】