阪神期待の2年目右腕、小野泰己投手(23)が力投し、チームの連敗を2で止めた。7回1/3を投げて3安打1失点。ルーキーイヤーの昨季はデビュー戦から12試合勝てず2勝に終わったが、今季は開幕ローテーションに抜てきされ、初登板で成長をみせつけた。前日3日に50歳の誕生日だった金本監督に、最高のプレゼントを贈った。

 小走りでマウンドを降りる小野に、無数の拍手が送られた。2点リードの8回1死三塁から四球を出したところで交代。だが、表情に曇りはない。プロ入り最長の8回途中での降板に、殻を破った様子だった。「いけるところまでいこうという気持ちで試合に臨んでたので、できれば8回、投げきりたかったんですけど、チームが勝ったので良かった」。116球も自己最多。成長をみせつける今季初登板初勝利だった。

 苦い思いは、もうしたくない。昨季はデビュー戦から12試合勝ちがつかず、球団の新人ワースト記録でもある開幕からの7連敗を経験。「登板前日もそうですけど、負けた日は眠れなかったですね。寝ようとしても、その日の配球が先頭打者から最後のバッターまで浮かんできたり…」。気がつくと辺りが明るくなる日々を過ごした。“13度目の正直”での初勝利は、17年8月29日ヤクルト戦。勝てば今度は「興奮して寝れなかったですね。やっと…勝てた! という思いが強かったので」。眠れないほどの悔しさ、そして喜びを背番号28は知っている。

 期待をかけて開幕ローテの一角を託した金本監督の表情も崩れる。「我慢して(昨年)使ってきたかいがあったなと。十分、今年は柱としてやってくれるんじゃないのかなという内容でした」と言い切った。

 お立ち台で小野は宣言した。「去年苦しい思いをたくさんしたので、今年は勝ち星が増えるようなピッチングを毎試合できるように頑張ります!」。金本監督は前日が誕生日で、50歳で迎えた初戦をものにし「完全に忘れとったわ。どうでもいい」と上機嫌だった。孝行息子の恩返しは、まだ続くはずだ。【真柴健】