東日本国際大(福島)が福島大を1-0のサヨナラ勝ちで下し、2季連続29度目の優勝を決めた。延長10回に無死一、二塁から始まるタイブレークの末、「1番DH」の青木龍成外野手(4年=日大山形)が、相手の捕邪飛落球後に左前サヨナラ打を放った。投げては先発のエース右腕、船迫(ふなばさま)大雅(4年=聖光学院)が9回を5安打10奪三振無失点と力投。投打に4年生が意地を見せ、2年ぶりの春優勝をつかんだ。

 4年分の思いを、バットに込めた。延長10回2死一、三塁。青木は冷静に闘志を燃やしていた。3球目の捕邪飛を相手が落球。命拾いして迎えた5球目、ベルト付近に来た外角スライダーを逆方向に流し、サヨナラ左前打で優勝をたぐり寄せた。一塁側ベンチから湧き出した仲間たちから、一、二塁間付近でもみくちゃにされながら、笑顔で整列に加わった。

 青木 感触は良くなかったけど、当たった瞬間ヒットだと思った。相手がエラーしたので、打たないと流れを失う。三塁走者をかえすのに必死だった。勝ちたい気持ちが前面に出た。

 4年生の意地を胸に、最後の春に臨んだ。昨年は右手有鉤(ゆうこう)骨骨折の手術を受け、神宮に直結する春のリーグ戦を全試合欠場。切り込み隊長を失ったチームは8年連続の春優勝を逃した。右手の握力が一時なくなるほどの状況で、優勝を信じてリハビリをしていた青木は悔しさをにじませていた。「春から痛くてどうにかしてやろうかと思ったけど駄目だった。責任を感じた」。復調して迎えた秋のリーグ戦ではMVPを獲得して優勝に導いたが、その後の明治神宮大会出場決定戦で敗れて神宮を逃した。

 青木 春に勝たなきゃ、意味がない。最終学年になるし、笑えるようないい思い出にしたかった。

 そのために、オフシーズンは納得するまで振り込んだ。母校の日大山形・荒木準也監督(46)からは「天才肌」と評されるほどの打撃センスを持つ。青木は自らを「自分の中では感覚が良ければ、打てる自信がある。イメージをして、ひたすら感覚を養った」と分析。1日に1時間かけて、じっくり300回バットを振った。感覚を研ぎ澄まして迎えた今春は、チーム最多タイの13安打に加え同3位の打率3割4分2厘。開幕から自慢の打撃でチームをけん引した。

 6月11日から開幕する全日本大学野球選手権(神宮ほか)は、初戦で神奈川大学野球連盟の優勝校と激突する。青木は胸を張る。「1番打者として、チームの勝ちを呼び込める打撃をしたい。最後は優勝して、笑って終わりたい」。4年生の意地が込められた青木のバットが、全国でも火を噴きまくる。【高橋洋平】

 ◆青木龍成(あおき・りゅうせい)1996年(平8)7月9日生まれ、山形・中山町出身。長崎小4年から野球を始め、中山中では山形シニアに所属。日大山形では高2夏の甲子園で県勢初の4強入り。東日本国際大では1年春からレギュラー。168センチ、74キロ。右投げ左打ち。家族は両親と弟、妹。