トラへの恩返しだ。西武榎田大樹投手(31)が「日本生命セ・パ交流戦」の阪神戦に先発し7回5安打3失点で、8年目で自己最多となる5勝目を挙げた。開幕の約2週間前に阪神からトレードで移籍。初めて投げた古巣相手に粘り腰を発揮。負ければ今季初めて首位を明け渡す可能性があった一戦でチームを救った。

 勝利への執念が体を突き動かした。2-0の5回無死一、二塁。阪神梅野のバントの打球が前方へ転がってきた。榎田はダッシュしてボールをつかむ。捕手炭谷は一塁を指示したが、「ここは勝負」と迷わず三塁へ投げた。判定はセーフ。すぐに辻監督がリクエストを要求した。フィールディングに自信を持つ左腕はリプレー検証の間も冷静だった。「握り替えたのでギリギリになったな。でも、セーフでも無死満塁。まだ点は入っていない」。アウトに覆った。後続を断ち無失点。直後、2点の追加点をもらった。流れを決める大きなプレーだった。

 古巣との初対戦が決まり「まさか、先発することになるとは。ファンの方も楽しみにしてもらえる」と歓迎した。平常心を意識したが、たびたび得点圏に走者を背負った。やはり気負いが出た。「力が入ってしまった。福留さん。鳥谷さん。一緒の期間が長い。僕がダメな時もいろいろと声をかけてくれた」。福留の言葉が思い出された。先発した14年3月30日の巨人戦。2回に大竹の打球を追い、福留と西岡が交錯。西岡は救急車で搬送される大けがを負った。自分が打たれなければと責任を感じた。その時、福留に「お前のせいじゃない。プレーの中でのことだから。自信を持って投げろ」と言われ、救われた。7回2死、最後にその福留を外角低めの140キロで見逃し三振。「ボールかも。気持ちで抑えました」と感慨深げだった。

 開幕2週間前のトレードを「チャンス」と捉えた。新天地で先発の座をつかみ、欠かせない戦力になった。お立ち台を降りると阪神ファンから「帰ってこいよ」の声。「元気な姿を見せられてよかった。6回は四球2つで失点。気を付けたい」。反省の言葉も心地よさそうに口にした。【古川真弥】