今や柱だ。DeNAドラフト1位ルーキー東克樹投手(22)が、チームの連敗を5で止める5勝目を挙げた。日本ハム戦に先発した左腕は、初対戦の相手に本来の力勝負を徹底。強い直球を軸にノビノビと押し、6回を1失点。三振も9個奪い、防御率2・01は巨人菅野を抜いてリーグトップに躍り出た。前日7日に4位に転落したチームを1日でAクラスに復帰させる好投で、ラミレス監督を最敬礼させた。

 右手に握る、こぼれそうなスポーツドリンクを気にすることなく、東は両手を上げて叫んだ。1度は打席に向かいながら代打投入で退いたベンチ。代わって入った中川大の左翼線へ運ぶ2点適時打に、降板の悔しさは吹き飛び、喜びをはじけさせた。「追加点が取れれば大きい場面。自分を代えて正解だったと思う」。本職のマウンドでは、堂々たる投球で、チームの連敗を5で止めた。

 新人ながら初のカード頭に抜てきされた。2連続四球で始まったマウンドだったが、毎回奪三振で躍動。9奪三振積み上げた。唯一、打たれた3回。1点先制され、なおも中田に連打を浴びて2死一、二塁のピンチ。5番アルシアをつり球で右飛に打ち取り、最少失点で切り抜ける。「コンディションはよかったが変な力みがあった。4回以降は力感なく投げられたと思う」。前回登板で投げ合った楽天岸の力感のないフォームをイメージし、最速150キロの直球を披露。防御率2・01は巨人菅野を抜き再びリーグトップに立った。

 登板10日前、少年時代を思い出した。5月29日、選手会行事で横浜市内の小学校をサプライズ訪問。泣きだす児童もいる中、夢を聞き自分自身と重ねた。小学6年のとき大会直前に左足首を骨折。さらに腰の疲労骨折もした。足や腰をかばって投げていたら肘も故障した。満身創痍(そうい)の1年の記憶をよみがえらせ「どとうの1年。小学校最後の年で頑張らないといけない1年なのに。でも、しっかりと体と向き合わないといけないと思える機会になった」。その考えがプロでの礎となっている。

 初の交流戦白星は、消費カロリーが多かったのか、ベンチでの“もぐもぐタイム”は、いつもより多い3本のバナナを消化。引き換えにチーム最多の5勝目を手にし「自信のある真っすぐで勝負できたことがよかった。ただ3回は反省」。地に足つけて、早くも2桁勝利折り返し地点に到達した。【栗田成芳】