ブルペンからマウンドに向かう前に、西武松本直晃投手(27)は背番号89のユニホームに一礼した。

 「森さんは僕にプロのイロハを教えてくれた。森さんに会って、『ああ、プロに来たな』と思いました」

 多臓器不全のため42歳の若さで亡くなった森慎二投手コーチの一周忌。ブルペンに掲げられた森さんのユニホームも見守る中、3年目の松本が好投した。8回に3番手で登板し、オリックスT-岡田、安達、伏見と3者連続三振。13-5と大量リードがあったが「点差は関係ありませんでした。2試合続けて失点していた。気合が乗りました」。絶対に0で抑えるつもりだった。

 入団1年目の16年。森さんは当初は2軍担当だった。5月に1軍に配置転換となったが、松本にとって、森さんがプロで初めて師事したコーチだ。「フォークは森さんに教えてもらいました。森さんもブルペンで投げていた方。準備の仕方や気持ちの面。僕のベースは、森さんに習いました」と、感謝の気持ちは大きい。

 ずっと大事にしている教えがある。「リリーフはマウンドに上がったら、初球から100%で行け」だ。T-岡田への初球はストライクからボールになるフォーク。森さんから吸収した球種で空振りを奪った。

 「真っすぐも148キロ出たし、シュートも同じスピードで投げられました。今日はイメージ通りでした」と胸を張った。辻監督も「松本が良かった」と名指しで評価した。昨季は1軍登板なしに終わったが、この日で登板17試合目。1年目の2試合を大きく上回っている。森さんのまいた種が芽吹いている。【古川真弥】