巨人は内海哲也投手(36)が後半戦開幕投手の大役を粘投で果たし、借金を完済した。初回に3連打で先制点を献上したが、その後はピンチをしのぎながら、6回6安打1失点にまとめ上げた。現役最多で球団史上10位の阪神戦通算27勝目を挙げ、チームを5連勝に導いた。5月26日以来の勝率5割に戻し、首位広島の背中をロックオンする。
灼熱(しゃくねつ)の甲子園の中心で、内海は肝を冷やさなかった。初回に1点を先制され、迎えた4回。先頭から連打を浴び、一、二塁とピンチを招いた。「開き直った。流れに押されないように、1人1人抑えようと」。全力かつ精密に腕を振り、球を低めに集めた。中谷、梅野を打ち取り、メッセンジャーを投ゴロに抑えると、クールにベンチへ帰った。「僕の持ち味は粘り。その点が強く出せた」。6回1失点で3勝目を挙げ、後半戦“開幕投手”の大役を全うした。
立派な大人になっても怖いものがある。「おばけが怖い。いるか分からんけど、小さい頃からずっとダメやね(笑い)」。夏の風物詩といえば、お化け屋敷。「今年の正月に子どもと行った大阪・ひらかたパークのお化け屋敷が最後。あれは優しいから」と頭をかく。見えない恐怖とは、今でもうまく付き合えない。
それでも、付き合わなければならない怖さがある。プロ15年目。エースだった過去とは違った恐怖を抱えている。「どんなに抑えても次の試合、この試合がダメなら終わりだという危機感がある」。36歳という年齢、若手の突き上げ、開幕2軍スタート。幾多の不安にも「ファームでぎらぎらしている若手を見て『俺も絶対に負けんぞ』と思ってきた」と闘志は絶やさず、信頼を積み重ねた。
節目にも特別感はない。菅野が球宴に登板し、山口俊が前半戦最終戦に登板。先発2本柱の登板間隔が詰まり、今季前半戦6試合に登板し、防御率2・29の左腕に白羽の矢が立った。「カード頭(の登板)はなかなかないかと思ったけど、そういう意識はない。チームが勝つことがうれしい」。現役最多の阪神戦27勝目を更新。また今日も1つの恐怖に打ち勝った。【桑原幹久】
<上原3人斬り、今季8ホールド目>
巨人上原浩治投手(43)が今季8ホールド目をマークし、日米通算100ホールドまで残り2とした。1点リードの7回に2番手で登板。1イニングを3人で抑えた。迫る記録について「勝ち試合でしかつかないことなので、うれしい」とし、勝ちパターンの起用に戻ったことについて「結果を出し続けられるように1戦1戦やるしかない。みんなで力を合わせて1つでも多く勝ちたい」と続けた。
▼内海が今季3勝目を挙げた。阪神戦は今季2戦2勝となり、通算ではカード別最多の27勝目(16敗)。阪神戦27勝は、巨人投手では歴代10位になるが、内海は東京ドーム12勝、甲子園球場15勝と、甲子園球場の方が白星が多い。巨人投手の甲子園球場の阪神戦勝利5傑を出すと、(1)堀内恒25勝(2)斎藤雅22勝(3)別所19勝(4)桑田17勝(5)槙原、内海15勝。江川、高橋一の14勝を抜き、内海が槙原に並び5傑入りした。