昨年9月以来の白星にも、西武高橋光は喜ばなかった。「野手の方に打っていただいた。それだけです」。今季初登板初先発は6回7安打4失点も、援護に恵まれた。失点の仕方が悪い。初回の2失点は四球がらみ。一時同点を許す4回の2失点は、先頭から四球、暴投、死球と自滅に近い形だった。「今季初登板の緊張で力みが出てしまいました」と反省ばかりだった。

 4年目の今季は、春先から右肩のコンディションが思わしくなかった。3月初めのオープン戦1試合だけで降格。2軍ではネットスローからやり直し、実戦復帰は5月31日だった。ただ、時間を無駄にはしなかった。「いい投手の条件は何かと考えました。7、8割の力で抑えることが大事。質のいい球で空振りやファウルを取る。高校ではできてたのに、プロの打者には『思い切り投げないと』と思ってしまった」。整理できていたが、空回りした。

 それでも勝ちは勝ち。チームは3連勝だ。甲子園出場中の前橋育英の後輩たちも観戦に訪れた。「いいところを見せたかった。(後輩たちの)刺激になれば」。13年夏の優勝投手は、そう言った時だけ口元をほころばせた。【古川真弥】