力強い真っすぐに力負けしないよう、広島会沢翼捕手(30)はコンパクトに、そして思いきりバットを振り抜いた。右中間で弾んだ打球に、二塁走者鈴木が一気に本塁に滑り込む。送球間に二塁に達した殊勲の男は総立ちのスタンド、ベンチとは対照的に、控えめに拳を握った。

 「(初対戦のロドリゲスは)どういう球道か分からなかったので、振って合わせていくしかないと思っていた。いいところに飛んでくれて良かった」

 この日初安打が値千金の決勝打となった。あごひげを蓄え、短ラン、ボンタンの学生服姿で現れた入団会見から12年。今季は選手会長を務める。開幕前には伸びた襟足も刈り上げ短髪を維持。あごひげは常にそり続ける。チームをただまとめるだけでなく、模範ともなった。何より「結果を残さないといけない」とグラウンドで結果を求めた。広島捕手最多70試合に出場し、打率3割1分8厘、9本塁打、32打点。攻守の要としてもチームをけん引している。

 ツープランならぬ、二枚腰打線だ。上位4人で計2安打に終わっても、「打てる捕手」会沢を含めた下位打線は強力。8番西川が3回にチーム初安打を放てば、4回は満塁から同点の2点内野安打。「6番左翼」で7月21日以来の先発出場の野間も2安打2得点を記録した。

 先発九里が4回で降板するなど、総力戦となった一戦を最後は選手会長が締めた。緒方監督も「アツがよくあそこで打ったね。上位だけでなく、下位でもチャンスつくって、得点につながる、上位につなげるうちらしい攻撃だった」とたたえた。4連勝で貯金はついに20。いよいよ優勝マジックが今日9日にも点灯する。「うちの強さは一体感。チーム一丸を重視したい」。開幕前にそう胸を張った「コイの兄貴」の下、頂点へチームは1つにまとまっている。【前原淳】