神隠し弾で“キング”に立った。巨人阿部慎之助内野手(39)が2回1死、先制の8号ソロを放った。DeNA平良拳太郎投手(23)からは初めての本塁打で、228投手からの本塁打となり、ローズ(近鉄など)に並び、プロ野球最多に躍り出た。チームは投打がかみ合い3連勝を飾った。

 横浜の空高くに舞い上がった打球は…。2回1死、阿部がDeNA平良の内角122キロスライダーをすくい上げた。半信半疑に二塁ベースを回る。上空の打球を見失った右翼手ソトも両手を広げて、1歩も動けない。「途中から打球の行方が分からなくなったけど、結果的にホームランになって良かった」。数秒後、審判の手が回るのを確認してから苦笑いで生還した。球場全体をも惑わす、先制の8号「神隠し弾」で主導権とチームの3連勝を奪った。

 プロ生活初の“本塁打キング”に立った。通算396号も本塁打のタイトルとは無縁だった。この日、元同僚の平良から初アーチで、本塁打を放った投手は延べ228人目となり、歴代最多のローズ(元近鉄など)に並んだ。「チラ見をしてくる」との理由で「チラさん」と名付けた沖縄出身の相手右腕にチラ見すら許さない1発で、228分の1に加えた。

 連続記録も大台も射程に入ってきた。長嶋茂雄終身名誉監督を抜き、球団史上歴代単独トップとなる入団から18年連続2ケタ本塁打まで、あと2本。プロ野球史上19人目の400号まで、あと4本。次々に大記録が迫るも「まずは9号だな」と我を見失うことなく1歩ずつ進む。打球を見失わなかった高橋監督も「見えてましたね。阿部の1本で雰囲気が出てきた」とチームを追い風に乗せた1発を評価した。ベテランの荒仕事が勝負の行方を決めた。【為田聡史】