阪神糸井が一矢報いた。4点を追う最終回、先頭で入った第4打席。カウント1-0からの2球目だった。中日佐藤が投じた真ん中低めの直球を豪快にフルスイング。打球はきれいな放物線を描きながら、バックスクリーン左側へ飛び込んだ。

 4回にも1死一塁から右前打を放っており、今季29度目のマルチ安打をマーク。打率3割1分2厘、59打点、15本塁打、16盗塁でチームトップを走り続けている。右足腓骨(ひこつ)骨折はまだ完治していない中でも、体を張って、背中でチームを鼓舞し続けている。

 キャリアハイも迫ってきた。この日の本塁打でオリックス在籍時代の14年に記録したシーズン自己最高19本塁打にあと4本。37歳にして超人のパワーは衰えるどころか年々増していることを数字が証明する。試合後は「負けたら何もないよ」と一言。敗戦に悔しさをにじませた。糸井は勝利につながるアーチを誰よりも欲している。【古財稜明】