試合が終わり、ベンチ前に選手が並んだ。中日藤嶋健人投手(20)が左翼上段に陣取るファンへ声を張り上げた。「ありがとうございました」。まるで甲子園のアルプス席前の1シーンのようだった。

プロ2年目右腕にとっては、初の広島戦先発。それも16年のドラフトで入団した高橋昂との同学年対決だった。「昂也より長くマウンドに立つ、強い気持ちで投げた」。序盤はボールは浮き気味だったが、要所では低めに抑えた。打線も初回から藤嶋を援護。初回に1点を先制、2回は打者10人の攻撃で5点、5回にも4点を追加してくれた。「先輩方が打ってくれて感謝しています」。

東邦(愛知)の藤嶋、花咲徳栄(埼玉)の高橋昂。ともに甲子園を沸かせ、16年には高校日本代表としてU18アジア選手権に出場した。「(昂也の方が)能力は格段に上。レベルの違いを痛感して悔しかった」。ここ2試合、試合を作りながら白星に恵まれなかった。6月17日の西武戦以来の2勝目。森監督は「ああやって粘れば、みんな勝てる。何かあるんだろうな、あいつ(藤嶋)には」。最下位を脱出。今季2度目の敵地マツダスタジアムでのカード勝ち越しに目を細めた。【伊東大介】