黒子に徹してきた広島菊池がスポットライトを浴びた。同点の延長12回2死三塁。阪神守護神ドリスの外角真っすぐに詰まらされながらも、飛球は飛び込んだ右翼俊介の手前で弾んだ。一塁ベースを回ったところで新井に抱きかかえられた殊勲者は、左手を突き上げ、チームメートの手荒い祝福に喜びを爆発させた。

「(先週6連戦の)東京でもチャンスで打てていなかったので、何とかしたい。その一心だった」

今季は思うように状態が上がらない。それでも2番打者として、ベンチからサインが出ていなくても状況に応じた打撃を選択。守備では投手陣がどれだけ失点を重ねても集中力を切らさず美技を連発。縁の下でチームを支えてきた。

表立って行動を起こすタイプではない。遠征先の宿舎ではスコアラーとともに部屋にこもり、打撃映像を1人で見入る時間が長くなった。チームの雰囲気が悪くなると、いち早く感じ取りシートノックで大きな声を出しながらボール回しから盛り上げ役を演じた。

苦しみながらもチームに貢献してきた脇役は久しぶりに主役となった。「たまにはいいんじゃないですか」と笑いながらも「今日は今日で、また明日(5日)勝てるように自分の役目ができれば」と足もとを見つめた。総力戦を制して、今季最長7連勝。マジックを自力で1つ減らし、12とした。緒方監督も「キクが最後まで残ってくれたファンの期待に応えて活躍してくれた。今日は全員でつかんだ勝利」と絶賛。広島はより団結力を増し、歓喜のエピローグを目指していく。【前原淳】