広島田中広輔内野手(29)が完封負けを喫した打線の中で1人、マルチ安打&マルチ盗塁で気を吐いた。1回の盗塁で2年連続30盗塁の大台に乗せ、2本上積みした安打数は149本。7日のレギュラーシーズン最終戦(対DeNA、マツダスタジアム)で、3年連続150安打&3年連続フルイニング出場を目指す。

広島打線が苦しむ中、田中はクールに2安打を放った。今季限りで引退を発表した天谷に定位置の1番を譲り、2番で先発出場。チームで唯一のマルチ安打は、自身7試合ぶり。さらに今季初のマルチ盗塁で塁上をかき回し、1人気を吐いた。試合後は「たまたまです」と淡々と振り返るも、クライマックスシリーズで対戦する可能性もある右腕に嫌なイメージは植え付けた。

1番を外れた8月18日に2割5分台だった打率は2割6分3厘にまで上がった。打順降格にも、早出調整のルーティンをかえず、コンディション維持に努めた。ロングバットでのロングティーで体全体を使う意識を植え付け、最近では踏み込んだ右足1本でスイングさせることでバットのヘッドを走らせる感覚を養った。日々の積み重ねが、安定した成績につながっている。

1回に二盗を決めて、2年連続30盗塁の大台に乗せると、4回には菅野のモーションを完璧に盗んで二盗を成功。リーグトップ32盗塁の山田に肉薄も「向こうの方が試合が多い。それでも1つでも多く増やしたい。(30盗塁は)ひとつの目標としてあったので良かった」と冷静だ。

何より意識してきた記録である15年4月1日から続けるフルイニング出場を567試合に伸ばした。残すは今季最終戦となる7日DeNA戦のみ。「気を抜かずに頑張りたい」。3年連続の完走を誓った。

緒方監督は0封を喫した中で孤軍奮闘の田中をたたえた。「今年は率があまり良くなかったけど、今日はいいアプローチをしていた。全員が失投を見逃さずに、という気持ちで行った中で、広輔がいい結果を出した」。一昨年のクライマックスシリーズではMVPを受賞した短期決戦に強さを発揮する“シリーズ男”だけに、復調気配は頼もしい限りだ。【前原淳】