電光石火で初仕事! 前日15日に阪神の次期監督就任要請を受諾した矢野燿大2軍監督(49)が16日、鳴尾浜球場を電撃訪問し、国内フリーエージェント(FA)権を今季初取得見込みの上本博紀内野手(32)に残留を要請した。上本は今オフFA権を行使する可能性があるが、新監督はスピード感あふれるスタイルをあらためて絶賛。「残ってほしい」と直球勝負で心を揺さぶった。

矢野新監督は就任受諾の翌朝、愛車を鳴尾浜に走らせた。午前11時25分に到着すると球団施設内へ。50分間ほどの滞在。「残ってほしい」-。1日も早く思いを伝えたい相手がいた。

「上本に関しては(鳴尾浜に)いるのが分かっていたから、ちょっと早くね。最後どうするかは上本次第だけど、オレの思いを伝えないのは、こういう立場になって違うかなと思って」

寝不足だった。就任要請を受けてから、わずか2日間で答えを出さざるを得なかった。前夜も「23時ぐらいに寝たけど1時半に起きて、うわっ寝られへんなとなった。考えることが多すぎて…」。この日も午後から甲子園球団事務所でチーム運営、編成面について話し合う場が設けられていた。それよりも先に、上本に会っておきたかった。

上本は現在、左膝手術からのリハビリを地道に進めている最中。一方で、国内FA権を今季取得する見込みとなっている。球団側はすでに2~3年の複数年契約を提示しているが、上本は結論を保留。球団関係者によれば、権利行使の有無は五分五分の状況が続いている。

だから新監督は上本残留を願うかと問われると「もちろん、もちろん!」と強調し、熱く訴えかけた。

「あれだけのスピードと、小さいけれど意外性のパンチ力と、バッティングのパフォーマンスというのはね。オレも今年ファームで走ったけど、スピード感とか躍動感は上本にすごくあるところ。使う側としては、そういう選手がいてくれるのはすごくありがたい。チームにとってはすごく必要なタイプだから」

もちろん、最終的な決断は尊重する。「自分もFAの時はすごく迷ったし悩んだ。上本もそうなっていると思う」と胸中を気遣うことも忘れなかった。ただ、今季ウエスタン・リーグ記録を更新する163盗塁に導いた将にとって、背番号00は絶対に欠かせないピースに違いない。熱い直球を胸元に投げ込み、残留を信じる。【佐井陽介】