手負いの虎よ「野武士軍団」になれ!! 阪神は16日、大阪市内の電鉄本社でオーナー交代内定会見を行い、12月1日付での新オーナー就任が内定した阪神電鉄・藤原崇起会長(66)がチーム再建の理想像を語った。今季は01年以来、17年ぶりの最下位。ビジョンの1つに「野武士」を挙げた。金本知憲前監督(50)が掲げた若手育成&勝利を追い求める路線を継続。矢野燿大新監督(49)の全面バックアップを誓った。
阪神が歩む前途多難な道のりに新たな「道しるべ」が示された。11日に金本監督が電撃的に辞任表明。前日15日に矢野2軍監督が就任要請を受諾したばかり。この日は球団トップも交代会見へ。10年ぶりのオーナー交代。12月1日付で就く藤原次期オーナーが自ら理想の組織像を明かした。
「私が好きなのは『野武士』という言葉です。野武士の集団は、1人1人に個性があるけれど、やるときには一体となって、何も合図しなくても、その方向に進んでいく。これがいい」
今季は01年以来、17年ぶりの最下位に沈んだ。戦況が悪化するにつれ、淡々と戦っているように映ってしまった。荒々しく、覇気あふれる集団は戦いの場で当然あるべき姿だろう。藤原氏は「1人1人個性を持ちながら、だけど、チーム一丸となって目標にスムーズに何の指示もなく。ただ、その方針は監督が持つ。それが理想」と続けた。
球界では50年代に黄金期を築いた西鉄が「野武士軍団」と称された。中西、豊田、稲尾…。若々しさあふれた集団を矢野阪神が来季再現できるか。新体制も「金本イズム」を継承する。藤原次期オーナーは「今まで本当に継続してやってきた体制、特に金本さんが築かれた体力強化、そして練習。新しいチームを作る思いも含めて進化させるようみんなと一緒に力を合わせていきたい」と話し、方針継続の姿勢を打ち出した。
育てながら勝つ。腰を据えたチームを作るために矢野新監督と3年の複数年契約を結ぶ見通しであることも判明。藤原次期オーナーは「阪神を根本から変えないといけない、これはみんなの共通認識。非常に継続的に新しい阪神を作る上では一番の適任者」と抜てき理由を明かし、続けた。
「この世界は勝つのが仕事。そして勝つことによって、ファンに喜んでいただけるチーム作りをする。優勝。それに越したことはない。若手育成の方針は変わりません。(矢野監督は)若手育成については、十分な見識をお持ちだと思う」
新指揮官に全幅の信頼を寄せた。基本的に対話路線で臨むという。「方針を聞けば、あとは本当に現場に任せていく、こういう格好にしたい。私もそれを必死でバックアップする」。32分近い所信表明に、思いが表れていた。【酒井俊作】
◆野武士野球 西武の前身球団、西鉄ライオンズは福岡に本拠地を置き、豪快な野球を展開。巨人を追われた名将三原脩監督のもと、鉄腕・稲尾和久のほか、攻撃陣には大下弘、中西太、豊田泰光ら個性あふれる強打者を擁した。いずれも巨人と対戦した、56~58年の日本シリーズで3連覇。豪快なチームカラーで全国のファンに強烈な印象を残し「野武士野球」と愛された。
◆藤原崇起(ふじわら・たかおき)1952年(昭27)2月23日生まれ。大阪府大から75年に阪神電鉄入社。05年に取締役、07年に常務取締役、11年4月に代表取締役社長、阪神タイガース取締役、同年6月に阪急阪神ホールディングス取締役に就任した。17年4月から阪神電鉄の代表取締役会長、同6月から阪急阪神ホールディングス代表取締役を務め、同12月からは阪神タイガースのオーナー代行者となっていた。