FA権“一時封印”の複数年契約を結んだ。ヤクルト中村悠平捕手(28)が8日、都内の球団事務所で2度目の契約更改交渉に臨み、3600万円増の年俸9000万円の3年契約でサインした。年俸は3年間固定され、出来高はなし。「内容の確認だけで、すぐにハンコを押しました」と晴れ晴れとした表情で振り返った。

力強く決意を示した。昨年12月13日に行われた1回目の契約交渉でも3年契約の提示を受けていたが、保留。順調にいけば今季中に国内FA権を取得するため、単年か複数年契約かを熟考していた。周囲や家族に相談し、3年契約を結ぶことを決断。昨季は123試合に出場し、打率2割1分1厘の成績だったが、FA取得を見越した球団からの最大限の提示に応えた。「単年での勝負もありましたけど、3年契約の中で、真のレギュラーというのを確立できるように。もう1度がむしゃらに、死にものぐるいで正捕手を目指したい」と言葉に力を込めた。

チーム愛を結果に昇華させる。今季は選手会長と主将を務め、先頭になってチームを引っ張ってきた。それだけに悲願の日本一への思いは強い。新たに3年契約を結ぶことは、FA権の行使を見送ることとなる。「リーグ優勝、日本一を目指してやらなくちゃいけない。FAというのは取れる人も取れない人もいる。それを活用するかしないかは自分次第。僕は複数年を結んだことで3年間は全く考えなくていい。そういった思いを含めての決断をした。もしかしたら3年後も、そういう考え(権利の行使で悩む)になるかもしれない。まずは、今年頑張るだけだと思います」と話す。

自らを追い込み、常勝集団への道を開く。17年は球団史上最悪の96敗を喫したが、昨季は2位に浮上。「その時(17年)の悔しさをみんなが忘れなかった」と振り返り、「バッテリーの力をもっと上げることができれば、カープのように毎年優勝できるようなチームになる。そのカギを握っているのは自分だと思っているし、それくらい自分にプレッシャーをかけたい」と今季の展望を口にする。9日から行われる毎年恒例の自主トレでは「1人でメニューを考えながらやることを心掛ける」と、他の選手とは別にランニングを行うなど個別練習も積む。

球団もさらなる飛躍を期待する。査定担当の斎藤チーム運営部次長は「球団としてもFAの話をして、出てもらっては困るという話をした。抜けられては困る選手ですので。年俸うんぬんではなく、レギュラーで全試合出てほしいという話をした」とホッとした表情で説明。主力のFA流出の可能性を防ぎ、シーズンに集中して活躍する環境を整えた。

中村は今季の目標を「全てにおいてキャリアハイを目指す」と口にした。まずは自身初の全試合出場、そして不動のレギュラー獲得へ。FAの思いを封印して、まい進する。

なお、中村でヤクルト全選手の契約更改が終了した。(金額は推定)