新天地で再出発。広島長野久義外野手(34)が移籍後初出場し、初打席初安打を記録した。

7回から左翼守備に就き、その裏に巨人吉川光から丸が守る中前へ。一方、同点の9回は極端な前進守備が災いし、吉川尚に左越えの勝ち越し打を許した。チームは13年以来の開幕カード負け越しも、長野にとっては上々の第1歩となったに違いない。

背番号5が、満員のマツダスタジアムで大きな歓声と悲鳴を一身に浴びた。長野は7回の左翼守備から移籍後初出場。その裏の初打席では、巨人3番手吉川光の外角カーブに腕を伸ばしてFA移籍した丸のいる中前にはじき返した。12球団から安打達成となる一打に、広島、巨人の両ファンから大歓声が注がれた。

だが、試合後の表情は険しかった。「守備で…あれは捕ってあげないと。打撃の方がまだまだ全然です」。同点の9回。1死一、二塁から吉川尚の打球は左翼方向に飛んだ。ベンチの指示で極端な前進守備を敷いていた長野は懸命に背走。最後は体を反転させて後方に滑り込むように手を伸ばすも、届かなかった。慌てた送球が大きくそれ、打者走者を三塁に進める失策も記録した。10年10月7日広島戦(東京ドーム)以来の公式戦左翼。緒方監督は「難しい、難しい。誰でも捕れてない」とかばったが、本人は悔しさを隠そうとしなかった。

チームは13年以来の開幕カード負け越しも、長野にとっては新天地で上々のスタートとなった。何事も“初め”が大事。丸の人的補償による移籍が決まった際「3連覇している強い広島カープに選んでいただけたことは選手冥利(みょうり)に尽きます」との第一声でファンの心をつかみ、入団会見では冒頭のあいさつでかみ、報道陣の笑いを誘った。キャンプイン前日の全体ミーティングでは「東京都港区出身の長野です」とあいさつ(本当は佐賀県出身)。その場は爆笑に包まれ、ある主力は「同じ佐賀出身の監督も笑っていました」と証言。初めて顔を合わせた広島の全選手、首脳陣のハートもつかんだ。

「好発進」も序章に過ぎない。2日からの3連戦はチームが昨年同一リーグで唯一負け越した中日との3連戦。巨人に在籍した昨年、中日戦打率3割4厘の長野にかかる期待は自然と高まる。【前原淳】