ミスター、おかえり! 巨人長嶋茂雄終身名誉監督(83)が2日、阪神1回戦が行われた東京ドームに来場した。

公の場に姿を見せたのは昨年6月8日の巨人-西武戦(東京ドーム)以来。試合前、次女の三奈さんに付き添われバルコニー席から手を振ると、大歓声が起こった。同7月に胆石で入院し治療を続けてきたが、回復。好機には代名詞の大きなリアクションで喜んだ。ミスターの笑顔に導かれ巨人は躍動。平成最後の東京ドームでの「伝統の一戦」初戦に完勝した。

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試合開始の5分前、ネット裏のバルコニー席にミスターが現れた。ベージュの格子柄ジャケットに濃茶のネクタイ、シャツはクリーム色で決める。次女の三奈さんらに付き添われ、左手を振る姿がバックスクリーンに映し出されると、東京ドームのファンから大歓声がわき起こった。

昨年7月に胆石のために入院し、公の場に姿を見せたのは298日ぶり。原監督ら選手たちも一塁側ベンチ前に飛び出し、長嶋氏に向けて何度も手を振った。 渡辺恒雄読売新聞グループ本社代表取締役主筆(92)と並んで座ると“再会”に燃えたナインが1回に先制攻撃を決める。無死一塁から坂本勇が中前打でつなぎ、続く3番丸が一塁線を破る先制適時二塁打を放った。主将の安打に左手でひざをたたいて喜んだミスターは、丸の先制打には大きく口を開け、思わず声をあげて拍手を送った。「丸に会いたい」とリハビリの励みにしていた新戦力。「やっぱり球場はいいね。わくわくするよ。みんな喜んでくれて手を振ってくれてね。打線も吉川君、坂本君、丸君が1、2、3で先制したから爆発したね。岡本君ももう少しかと思ったけど、よく打った」と喜んだ。

東京ドームでの生観戦は、長く思い続けた強い希望だった。昨年末に退院したが、毎年恒例の宮崎キャンプ視察は体調回復を優先して見送った。連日自宅近くの公園を歩くなど、トレーニングを継続。観戦は2日前に決断し、原監督も当日に知ったというサプライズ登場で驚かせた。この日は2回途中で退席したが「またドームに来て応援したいと思います」と約束。昭和、平成を駆け抜けたスターが球場に帰ってきた。【前田祐輔】

◆長嶋終身名誉監督のこれまで 昨年は5月に3度ほど巨人戦の観戦に訪れるなど精力的だったが、7月初旬に体調が優れずに大事を取って入院。検査で胆石が見つかったため、入院したまま治療を継続。年内の名球会イベントや自身の野球教室などを欠席していた。入院中にも復帰した原監督には「ペナント奪回に向けて頑張ってほしい」とエールを、広島からの移籍か残留に揺れていた丸には「一緒に野球ができたらうれしい」と手紙を送っていた。回復は順調で、昨年末に退院。自宅に戻ってリハビリ、トレーニングに励んでいる。