第25代4番のミスターが現れた巨人軍の庭で、第89代4番の体が反応した。3回1死二、三塁、カウント1-2。岡本は左足の上げ幅を狭め、阪神ガルシアの真ん中低め速球に合わせた。ライナー性の打球は左中間フェンスに衝突。2点適時二塁打に「久々にレフト方向に、いい当たりが飛びました」と喜んだ。二塁上で、赤い打撃用手袋をまとった右拳を一瞬ながら固く握った。今季15打席目で初の適時打をかみしめた。

期待値は高い。2リーグ制導入以降、23歳以下シーズンでは59年長嶋、62年王、96年松井しか経験したことのない「開幕4番」に座った。22歳8カ月はミスターを上回る早さ。昨季は史上最年少で3割30本100打点を達成し、真価が問われる5年目のシーズンを打線の中心で迎えた。

開幕3連戦で13打数2安打、打率1割5分4厘に沈んだ。4番の仕事を果たせていなかったが、チームはリーグ3連覇の広島に連勝。勢いに乗るためにも、本拠地開幕戦の試合前には早出で打撃練習を行い、感覚を取り戻そうと振り込んだ。就寝前に試合の打撃を振り返り、翌日の練習で試したいことを決めてから眠りに入る。努力のルーティンが才能を目覚めさせた。

2安打の2番坂本勇、1号ソロが飛び出した3番丸に負けじと、待望の1本が出た。今年で85周年を迎える球団史の頂点に君臨する長嶋茂雄の面影を追うように、新たな歴史を刻もうと奮闘する第89代4番が輝きを放った。【桑原幹久】