苦しんでいた阪神ドラフト3位の木浪聖也内野手(24)が、18打席目でプロ初安打を放った。7回1死の代打で中日佐藤から中前打。このヒットを口火に、4試合ぶりに先発復帰したドラフト1位近本光司外野手(24)の適時打などで3点をかえして一時2点差に迫り、大逆転の夢を抱かせた。反撃及ばず3連敗を喫したが、開幕で1、2番を組んだキナチカの復活が希望の光だ。

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木浪が一塁ベース上でほっとした笑みを浮かべた。「ずっと出なくて苦しかったので、うれしかったです」。5点を追う7回1死に代打で登場。中日佐藤の136キロ直球をセンターへきれいにはじき返した。待望のプロ初ヒット。一塁ベンチに向けて両手を突き上げると、笑顔のナインが大きな拍手で応えた。

18打席目でやっと出たヒットだった。オープン戦では12球団最多の22安打を放ち、阪神のルーキー最多安打も更新。飛ぶ鳥を落とす勢いで、「1番遊撃」で開幕スタメンをつかんだ。だが開幕後はさっぱり快音が響かず、3日の巨人戦からスタメン落ち。代打での出場が続いていた。だがこの日は、カウント1-1から思い切り振り抜いた。「オープン戦の時も良かったのはそういうところ。積極的に行きました」。長所を思い出しての快音だった。

苦しかった時間も「いい勉強になりました」と振り返る。昼は鳴尾浜の2軍戦で実戦経験を積み、夜は1軍戦に親子出場する日々。「最初だけだったらダメ。プロに入って続けることが難しいと思った。試合に出してもらっているだけでも感謝です」。自分に言い聞かせるように黙々とバットを振った。近本らチームメートに自分の打撃が今どんな状態か、客観的なアドバイスを求めてもみた。試合中はベンチの最前列で戦況を見つめて声援を送り、チャンスをうかがってきた。

木浪の初安打で勢いづいたチームは7回、近本の適時打などで3点をかえし、一時2点差まで迫った。いいところなく完敗しかけた試合を1本のヒットが盛り上げ、大逆転の夢を見させた。矢野監督は「オープン戦にかなりいい状態で入って、シーズンで苦しんだ中で出た1本。本人も前を向いていける1本になった。持っている能力はいいものを持っている」とルーキーの背中を押した。開幕で1、2番を組んだ近本も一時スタメンを外れたが、この日は初猛打賞で上り調子。キナチカ復活再び。この1本を自信に、レギュラー奪回を目指す。【磯綾乃】

 

▽浜中治打撃コーチ「(木浪は)1本出てほっとしているでしょう。オープン戦では力を発揮しているので、どんどんチームに貢献してくれると思う。(近本は)状態は良くなっている。力を発揮してくれている」

▽木浪父・弘二さん「(自宅でインターネット中継で観戦)やっと出ましたね! よかった、よかった。ヒットが出なかったので、本人も焦っていたと思う。それでも1軍に帯同させてもらって…。やっと1本。まだまだこれから。たくさん打ってほしいですね。ゴールデンウイークは甲子園に行きます! 4月30日から5月5日まで。鳴尾浜じゃなくて甲子園で聖也を見たいですね」