中日が1046日ぶりの「貯金」に成功した。球団史上24年ぶり3度目の満塁本塁打2本で阪神を沈め、今季初の3連勝。成績を7勝6敗にした。京田陽太内野手(24)は人生初というグランドスラム。与田剛監督(53)のもと出場機会を増やす堂上直倫内野手(30)が終盤にダメを押した。借金ばかりだった3年の間に2人の監督が退任。6年連続Bクラスと長い低迷期にある老舗球団に明るい話題だ。

右翼への飛球を押し戻す甲子園の浜風に負けなかった。4回無死満塁。京田が岩貞の初球を強くたたいた。会心の手応えだったが「思ったより飛んでなくて。でも何とか入ってくれた」。満塁弾はプロどころか「人生初」だという。過去2年は年間4本ずつ。レアな一振りでリードを5点に広げ、新生・与田竜に記念の1勝をもたらした。

17年新人王の京田は昨年、ワースト2位の打率2割3分5厘。危機感が高まる状況で、注目ルーキー根尾が入ってきた。内心、穏やかなはずがない。ただ京田には苦しみ抜いた2年間がある。ゴロの捕り損ねで、打ち損じで、バント失敗で精神を病み、試合中のベンチで涙も流した。悪夢にうなされる日々でも、早出練習は欠かさなかった。

今年の開幕戦はついにスタメン落ち。その悔しさをバネに再び「1番遊撃」をつかんだ。満塁弾1本に安住する男ではない。「1日1日が勝負ですから。(同期の)柳が投げて京田が打って。最高の試合じゃないですか!」と笑ってバスに乗り込んだ。

2本目の満塁弾を放った堂上も心境は同じだ。最近2年間はその京田に遊撃を譲ったが、京田、根尾との真っ向勝負を宣言してきた。8回に阪神にとどめを刺す満塁弾を左翼に運んだ。「直球が来ると思って思い切りいった。しっかり打ちにいけました」。

与田監督は徹底した競争原理を持ち込んでいる。昨年と野手のメンバーは同じだが、固定化をやめ、この日、プロ初の3安打を放った加藤や三ツ俣らを迷いなく抜てきした。アベック満塁弾は新監督が掲げる方針と無関係ではない。

谷繁監督、森監督が果たせなかったAクラス。ただ、これまでの体制で苦労を重ねてきた選手は、与田監督のもと、何とか花を咲かそうとしている。「貯金が何年ぶりかとは意識していない。1つでも多く勝って、首位を目指す気持ちを変わらず、ずっと持っている」。与田監督はファン待望の貯金生活にも、一喜一憂する様子はなかった。【柏原誠】