広島長野久義外野手(34)が「日本生命セ・パ交流戦」の日本ハム戦で、吉田輝から唯一の得点を奪うなど、チームでただ1人マルチ安打と気を吐いた。昨年7月26日ヤクルト戦以来、移籍後初の1番スタメンで出場。1回に右前打を放ち、2回は同点二塁打を記録した。経験豊富な34歳が、交流戦に入って苦しむチームをバットで鼓舞していく。

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何度もヒーローを演じてきた長野が、北の大地で見事にヒール役を演じた。昨年7月26日以来の1番先発。1回、プロ初登板初先発となった日本ハム吉田輝が初めて対戦した打者としてプロの洗礼を浴びせた。2ボールからの外角真っすぐをたたいて一、二塁間を破った。さらに1点を追う2回2死一塁からは再び外角直球を捉えた。左中間を破る二塁打で、黄金新人にプロ初失点を記録させた。

4月27日ヤクルト戦以来のマルチ安打を記録した。チームでただ1人の複数安打だった。だが、5月26日巨人戦以来の打点も、チームの勝利にはつながらなかった。広島打線が吉田輝ら日本ハム投手陣の前に5安打、長野が奪った1得点に終わった。勝利のヒーローにはなれなかったが、吉田の印象を聞かれた試合後は「マウンドでの落ち着き方はルーキーっぽくない感じがした。セットポジションで長く持ったり、早く投げたりも上手」と次代のスター候補の力を素直に認めた。

空席となった1番を広島で初めて任された。前日まで1番の野間は13打席連続無安打中で今季初の出番なしに終わった。開幕1番の田中広も打率1割台と低迷が続く。巨人時代は12年の最多117試合から昨年まで7年連続で1番を務めてきた長野に白羽の矢が立った。主力に代わる役割を託せる経験と実績、力がある。まだスタメン17試合目も、首脳陣が長野を必要とする理由のひとつだ。

2安打1打点で見事に起用に応えた。東出打撃コーチは「いい入り方をしていた3打席目までね。内容、結果ともに出してくれた。(1番起用は)結果を出してくれれば」としばらく1番を託す考えを示した。長野は「どこでも関係なく、やるだけなので」とだけ話した。チームはエースの登板試合を落とし、交流戦3カード連続負け越しとなった。チームの窮地を救ってこそ、真のヒーローだ。【前原淳】