史上13人目の監督通算1000勝を達成した巨人原辰徳監督(61)の軌跡をたどれば、育成出身選手の活躍が1つの象徴と言える。巨人史上初の育成選手から支配下選手登録された松本哲也氏(35=現ファーム外野守備走塁コーチ)、プロ野球史上初の育成出身選手で新人王を獲得した山口鉄也氏(35=現ジャイアンツアカデミー)が原監督との思い出を語った。

【取材・構成=久保賢吾】

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松本コーチは、今でも10年前の試合前のひとコマを強烈に記憶する。09年シーズン終盤の試合開始10分前、ベンチで座っていると、背後の原監督から声を掛けられた。

「まっちゃん、状態は良くないかもしれないけど『ガッ』と目を見開いて、向かっていけ」。

当時、バント失敗、不調も重なって、「何とか挽回しないと。打たないと」と気負いすぎ、悪循環で3割をキープした打率も下降。下を向きそうになりかけた時、監督の言葉がグッと心に響いた。

松本コーチ 監督の言葉を聞いて、目が覚めたというか、開き直れたし、思い切っていけた。

最大の苦境を乗り越え、レギュラーを死守。その年、チームはリーグ優勝、日本一を成し遂げ、自身も新人王を獲得した。

コーチに就任した今、その経験を自らの指導にも生かす。「やっぱり、言葉は大事だなと。選手それぞれ違うので、この選手にはどういう風に伝えればいいかとか、常に考えながらやっています」。

山口氏も同じように、原監督の言葉に支えられた。07年からのリーグ3連覇、12年からのリーグ3連覇に大きく貢献した。

山口氏 1つ1つの言葉が重いですし、心に刺さることを言ってくれる。不安や苦しい時もあったけど『よし、やってやるぞ』という気持ちでマウンドに上がれた。

原政権下では通算3位の50勝をマークした。だが、山口氏は失敗しても、信頼し、起用してくれた原監督への感謝を繰り返した。

山口氏 うれしいですけど、勝った試合より、負けた20敗をよく覚えています。監督が失敗しても、使ってくれた。ネガティブなことは一切言わず、ポジティブな言葉で前を向かせてもらった。だから、マウンドではいつも無心で腕を振れた。使っていただいたことに感謝しかないです。

2人は今、それぞれ新たなステージで巨人軍に携わる。立場は変われど、胸には「原イズム」が継承されている。