広島の主砲がチームを崖っぷちから救った。

3点ビハインドの9回無死一、二塁。鈴木誠也外野手はヤクルト・ハフの3ボールからの4球目、カットボールに反応した。「打てる球が来たら打とうと思っていた」。

空振りでも、ファウルでもいい。ただ、中途半端なスイングだけはしないと決めた一振りで、試合の流れを変えた。

前の4打席無安打は頭にはなかった。

「反省は試合が終わってからでいい。次の打席、次の打席と気持ちを切り替えて、自分に何ができるかと考えて入れている」。凡打して感情をあらわにすることもなくなった。各打席での切り替えが、リーグトップの打率3割3分4厘を生んでいる。

主力が多く抜けた今季は「個が大事」と言い続け、自身も柱としての自覚が芽生えた。お立ち台に上がった今季途中加入の三好に、野間とともに“誠也シャワー”で広島の洗礼を浴びせたのも、チームの輪に取り込もうとする気持ちの表れでもあった。

首位巨人との6・5ゲーム差を死守した。緒方監督は「誠也がよく打った。あれが非常に大きかった」とたたえた。シーズン2桁サヨナラ勝利は、球団最多11度の03年以来16年ぶり2度目。ドラマチック・カープの戦いはまだ終わらない。【前原淳】