平井様が稲尾様に並んだ。同点の8回、西武平井克典投手(27)が4番手でマウンドに上がり、安打を許しながらも1回を無失点。メヒアの来日初のサヨナラアーチを呼び込むリリーフが、今季78登板目。西鉄時代の61年稲尾和久氏が持つリーグ記録に並んだ。チームは劇的勝利でホーム最終戦を飾り、優勝マジックを4。最短22日楽天戦(楽天生命パーク)で連覇を目指す。

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稲尾に並んだ平井が、サヨナラ勝ちを呼び込む投球で、リーグ記録に花を添えた。8回のマウンド。先頭茂木に中前打を許した。「どうしても勝ちたかった。気持ちだけ。絶対に抑えるんだって気持ちだけだった、と思う。あんまり覚えていないんです」。闘志がボールに乗り移る。打席は今季何度も痛い目に遭わされた浅村。カウント2-2からスライダーで遊ゴロ併殺打に打ち取る。続くブラッシュは直球で空振り三振。山賊打線を信じて、封じた。

78登板という58年間も破られることがなかった記録に並んだ。優勝マジック5で迎えた本拠地最終戦。埋め尽くされたスタンドにボルテージは自然と上がる。「スイッチはマウンドに上がれば勝手に入る」。スタンドからは「平井様!」の大声援。「どのアスリートだって、観客が多いところでやることはうれしいこと」。打たれるわけにはいかなかった。

プロ3年目。「僕みたいな選手が、1軍で投げられるとも思っていなかった」。高校時代から優勝とは無縁だった。「監督、コーチのおかげです。今はいないけど、(森)慎二さん、土肥さん。指導していただいたことが、ちょっとずつ出てきているんだと思います」。遅咲きの鉄腕は、芽吹く前までさかのぼって感謝する。

残り5試合、マジック4。山賊らしく豪快にホームでの有終の美を飾った劇的サヨナラ勝利の余韻に浸りながら言った。「まだ終わってない。まだ何も言えない。チームが勝つことが大前提。またチームの勝ちに貢献するために頑張りたい」。勝つために投げる。新記録はあとからついてくる。【栗田成芳】