日本ハム有原航平投手(27)が、「最多勝利投手」のタイトルをほぼ手中におさめた。21日ソフトバンク25回戦(ヤフオクドーム)で、7回2安打1失点。ソフトバンク千賀に2勝差をつけ、リーグトップの15勝目。また防御率(2・46)も首位をガッチリキープした。エースの快投で、チームの連敗は2で止まり、逆転CS出場に望みをつないだ。

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球場の空気さえも、支配した。有原が、強力打線に立ちはだかった。直球を軸に、要所でチェンジアップを効かせた。柳田、グラシアル、デスパイネの中軸を計9打数無安打と完璧に封じた。7回2安打1失点で15勝目。「(田中賢が)福岡での試合が今日で最後と知っていたので、何とか勝ちたいと思っていた。良い投球が出来て良かった」。ベンチ内では試合中にもアドバイスをくれる先輩の、故郷でのラストゲームを飾った。

孤軍奮闘の成果が、形になろうとしている。最多勝、防御率(2・46)でリーグ1位。勝率は6割5分2厘で2位に付けている。この日の白星の価値は大きく、千賀に2勝差をつけた。「残り試合もあるので、最後まで気を抜かずに頑張りたい」。控えめに向かう先に、15年新人王以来の個人タイトルが待っている。

投球同様、丁寧な気遣いを忘れない。8月の旭川での試合。登板機会がなかったため、チーム本体から外れて金子ら他の先発陣と2軍の千葉・鎌ケ谷で調整した。「今回は行けないので」。チームスタッフに、今年の球宴で使用したグローブとスパイクを託した。

かつてエンゼルス大谷とも一緒に食べた旭川のカレー店「クレイジースパイス」へのプレゼントだった。これまで展示されていたのはアンダーシャツのみ。そのことを知ると、機転を利かせた。世話になった店へ、細やかな配慮が込められた贈り物だった。

エースが快投し、チームの連敗を「2」で止めた。栗山監督は「素晴らしかったですね」と好投をたたえた。上沢が抜け、先発陣の柱としてフル回転してきた。有原は「今年は大事なところで勝てなかった。今日勝てたことは次につながる。次はもう少し投げられるように頑張りたい」。真のエースへの階段を上っていく。【田中彩友美】