日本ハム実松一成2軍育成コーチ兼捕手(38)が23日、涙で現役最後の試合を終えた。

2軍本拠地の千葉・鎌ケ谷での今季最終戦となったイースタン・リーグ巨人戦に「1番捕手」でスタメン出場。二塁失策で出塁し、代走を送られ交代。涙を流してファンにあいさつし、日本ハム、巨人でのプロ21年間にピリオドを打った。

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誘い出されるままに、照れくさそうに輪の中心に吸い込まれていった。西日が差し込み始めた千葉・鎌ケ谷のグラウンド。実松が8度、宙に舞った。胴上げしてくれたのは、在籍した日本ハムと巨人の選手たち。万感の思いに包まれた。

実松 まさか胴上げしてくれるとも思っていなかった。「今までありがとう、みんな」という思いしか。言葉にも出なかったですね。明日から野球やらないってどんな感じなのかなって全く実感なくて。こうして、あんなことをみんなにやってもらったりすると終わったんだなって実感が少しずつ出てきています。

試合開始と同時に、涙腺は崩壊した。首脳陣の粋な計らいで「1番捕手」で先発出場。「正直、試合前くらいまで全く実感なくて。涙は出ないと思っていたんですけどね」。1回の表に守備に就いた時点で、マスクの奥の瞳はぬれていた。2死から捕ゴロを処理すると球場は沸いた。

実松 なかなか捕ゴロって、狙って出来るわけじゃないので。捕手で良かったなっていうか…。最後に自分の所に(球が)飛んできてくれたので、これも「お疲れさま」って意味なのかなって思いました。21年やったんですけど、早かったです。

現役最後の打席へと導いてくれたのは、プロデビュー時のウグイス嬢で、同学年の石井久美子さん。まるで21年前に舞い戻ったかのような感覚に、涙は止まらなかった。「自分でも抑えられない感情は、初めての経験」。ぼやける視界をこじ開け、狙いを定めた。

二塁失策で出塁。代走を送られ三塁側ベンチに戻ると、顔をくしゃくしゃにして1人1人と握手を交わした。「完全燃焼ですね。これが僕の限界でした」。プロスタートした鎌ケ谷で、21年の野球人生を走り終えた。【田中彩友美】