泥だらけのリードオフマンが躍動した。巨人亀井善行外野手(37)が3安打猛打賞の活躍で阪神とのクライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージで連勝を飾った。

5回1死一、二塁では、二走として重盗を決め、ダメ押しの追加点をもたらした。今季限りで引退する阿部に次ぐ、生え抜きのベテランが存在感を発揮。アドバンテージ1勝を含む3勝で6年ぶりの日本シリーズ進出へ王手をかけた。

膝元への直球にバットのヘッドを走らせた。1回先頭の亀井が阪神高橋遥の150キロ内角直球をはじき返した。右翼線に弾む打球を横目に、一気に加速。二塁に頭から飛び込んだ。「シーズン中は、しないですけど、流れというか、チームを盛り上げるというかね。大事なところ」と総立ちのベンチに向かって手をたたく。丸の遊ゴロ併殺の間に先制のホームを陥れ、赤土で汚したユニホーム姿でナインとハイタッチをかわした。

37歳のベテランは小さな“努力”をコツコツと積み上げてきた。次打者席にバットを2本持ち込むのが亀井流。マスコットバットと通常バットを2本持って素振りをする。他の選手たちが使う共用の1・3キロのマスコットバットより約200グラム重いものを愛用。「すごく小さなことだけど、1年間続けたら、少しはトレーニングにつながるかなと思って。もう、おっちゃんだからさ」。目尻にしわを寄せて笑った。

200グラムの差は、今季511打席に換算すると102・2キロに跳ね上がる。手首から上半身、下半身と全身に染みこんだ力となって打席によみがえった。猛暑の8月に入り「バットが出てこない。これじゃあ、いつもと一緒。最後まで何とか」。開幕から8月までは右方向の安打が48%を占めたが、9月以降は33%に減少。技術で逆方向に打ち返すも、本来の打撃ではなかった。だが、この日の3安打は全て右方向。力強いスイングが復活し「うまく調整できましたし、いい状態に持ってこれた」とうなずいた。

勝負を決定づけた4点目は足でもぎとった。5回1死一、二塁。「隙があれば、どんどんと。大きかった」と一走坂本勇と絶妙なコンビネーションで重盗を決めた。走攻守、3拍子そろったベテランの力は健在。6年ぶりの日本シリーズまで、あと1勝。プロ15年目の亀井が先頭を走る。【為田聡史】