侍ジャパン坂本勇人内野手(30)が“神バット”でよみがえった。プレミア12スーパーラウンド(SR)第3戦のメキシコ戦で今大会初の適時打を含む3安打猛打賞。前日の米国戦で初黒星を喫したチームを快勝に導いた。

慣れ親しんだ2番で起用され、1回の左前打に続き、2回には左前適時打をマーク。6回にも左前打を放ち、復調を予感させた。16日SR最終戦の韓国戦に勝利すれば、無条件で17日の決勝進出が決まる。主要国際大会では10年ぶりとなる世界一まで、あと2勝だ。

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念じたバットから快音をとどろかせた。不振に苦しんだ坂本勇が3つの「H」ランプをともした。米国敗戦から一夜明けた一戦。1回1死、相手先発ラミレスの初球を果敢に狙った。「あまり分からない投手なので早めに仕掛けて。たまたまシフトを敷いてくれてたから。(本来だったら)ただのショートゴロ」と、三遊間に3人を配した変則シフトの間を抜く幸運の一打でSR初安打。2回1死一、二塁からは高めのツーシームを左前に強引に運び、今大会初の適時打。「ベンチでめっちゃ、みんな喜んでくれたんで」と一塁ベース上で両拳を突き上げた。

鍛錬の地の神様が救いの手を差し伸べたのかもしれない。台湾での1次ラウンド中だった。契約するSSK社のベテラン担当者がバットを手に巨人のキャンプ地、宮崎の青島神社に向かった。2月1日に巨人ナインが参拝する有名なパワースポットで入団時から坂本勇をサポートする担当者は「台湾の試合はテレビで観戦しました。なんとか打ってほしいと思って…」と正真正銘の神頼みに打って出た。思いを込めた“神バット”をSR前に届けた。

慣れ親しんだ打順も復調を後押しした。巨人では今季は主に2番に入り、自己最多40本塁打をマーク。打率3割1分2厘で絶対的な存在感を示した。今大会は、この日初めて2番に入り、6回に左前打も放って3安打猛打賞で蘇生した。「内容は良くないけどHランプがつくのは打者としてはすごい気持ち的に楽になる。どんなヒットでもいいので、1本でも多く次も打てるように頑張ります」と次戦以降に向けて奮い立たせた。

5日ベネズエラ戦では好機で代打を送られ、11日オーストラリア戦は不振でスタメン落ち。大会初黒星を喫した12日米国戦は4打数無安打3三振で沈黙した。それでも「マイナスなことを考えて打席には立たないようにしていた。それはずっと、変わらない」と屈強な心で踏ん張った。16日SR最終戦の韓国戦に勝てば、17日の決勝が待ち受ける。「全員で一丸となってどんな内容でもいいので勝つことだけを頭に入れて頑張ります」。世界一まであと2勝。沈みかけた侍ジャパンを坂本勇がバットでよみがえらせた。【為田聡史】

◆決勝進出の行方 可能性があるのは日本、メキシコ、韓国、台湾の4チーム。日本は16日韓国戦に勝てば1位通過となるが、早ければ15日にも決勝進出が決まる。条件は韓国が15日メキシコ戦に勝つこと。この場合は、日本が韓国に負けて3勝2敗となっても、同成績で並ぶ他のチーム(メキシコと台湾か、メキシコだけ)との直接対決に日本が勝っているためで、日本の2位以内が確定する。韓国がメキシコに負けた場合は、日本の突破は16日に持ち越しとなる。