広島先発九里亜蓮投手(29)が8回1/3を4安打1失点で、自身3連勝の7勝目を手にした。阪神打線を6回2死まで無安打、8回までも1安打に抑えた。8月まで2勝も、9月以降は5勝2敗と加速。エース大瀬良や野村、ジョンソンら実績ある先発投手を多く欠くチームをタフネス右腕がけん引する。規定投球回数に到達し、今季の最終規定投球回数まであと15イニングとした。

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力で押し切った。9回1死から3連打を浴びて抑えのフランスアにマウンドを譲ったものの、4安打1失点と力投。勝利の立役者は九里だった。阪神打線に力で押す投球で6回2死から近本に打たれるまで無安打で、8回までその1本に抑えた。ただ、7勝目の九里に笑顔はなかった。

「最後まで投げきれないところが悔しいです。今日の試合に関してはそこ。悔しさしかないです。ああいう投球をしていると、8回まで良かったのも、なかったことになる。最後まで投げきれないといけない」。

最後までマウンドを守り切れず、今季2度目の完封を逃した自分に怒りを感じていた。悔しさをバネにここまできた。開幕前は2軍調整を命じられ、若手とローテーションを争った。開幕ローテ入りも、8月までわずか2勝。6連戦の初戦に当たる火曜日に先発を託されながら、期待に応えず、悔しさは焦りにもなった。

もがきながら投球フォームをワインドアップから、セットポジションに変えたことが転機となった。ワインドアップでは疲れが出る終盤に、知らぬ間に反動をつけるような動作が精度に影響した。常にセットポジションから投じることで制球が安定。「自分が意図した球を投げきれるようになったのがあります。ゾーンで勝負することがある程度できているのかなと思います」。毎年取り組んできた球威も増した。この日も低めに集めた力強い真っすぐを中心に押し、25個のアウトのうち、9個のフライアウトを奪った。

佐々岡監督は「今日は本当にナイスピッチング。球が強くて(打者の)タイミングが合わずに差し込んでいた」とたたえた。開幕から期待してローテの一角を任した右腕が、V字回復して9月以降は5勝2敗。「春先はフォームにいて悔しさもある中でやってきたと思う」と指揮官も目を細める。

九里は今季初完封だった9月28日のDeNA戦から4戦続けて7回以上を投げて1失点以下と抜群の安定感。エース大瀬良や野村が離脱する中、ローテを守り続ける。タフネス右腕が悔しさを力に変え、苦しんだシーズン終盤に成長の跡を示そうとしている。【前原淳】