「黄金の左手」で黄金左腕をつかみとった。「プロ野球ドラフト会議 supported by リポビタンD」が26日、都内で行われ、楽天石井一久ゼネラルマネジャー(GM=47)が4球団競合の末、ドラフト1位で早大・早川隆久投手(4年=木更津総合)の交渉権を獲得した。過去2年は右手で外れくじを引いたが、日米通算182勝をマークした左手で引き当てた。

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「黄金くじ」がキラリと輝いた。開封を促す声から3秒。交渉権確定の文字を目にした石井GMが「黄金の左手」を1度、2度と振った。「人生でこんなに緊張したことはないです。スカウト皆さんの思いも持っているので。僕、役に立ったなと…。後付けですが、当たるんじゃないかなと思いました」。やや早口で、白のマスク越しに興奮を抑えきれなかった。

勝負をかけた。過去2年は右手で藤原、佐々木朗(いずれもロッテ)を外した。前夜は「左手は運を使ってきたので…」と迷ったが、報道陣の質問をきっかけに考えを巡らせた。「現役時代は勝負の時は左なので。やっぱ勝負は左でしょと」。日米通算182勝を挙げた利き手を信じ、4球団の競合に勝った。

4つの縁も、2人を引き寄せた。「隆久というのは、僕のお父さんが『隆(たかし)』僕が一『久』。両方漢字が入っているので、縁を感じました」。名前に加え、ともに千葉出身で左腕。楽天カラーのクリムゾンレッドは、早大カラーのえんじに似る。ネクタイは「楽天、早稲田、どっちつかずな色で…」と中間色を選んだ。同系色を2本持つが、クジを外した昨年とは替えた。「前日からちゃんと出しておきました」と験を担いだ。

黄金左腕の存在価値は高い。今季先発した左腕は今季4勝の塩見、3勝の弓削、未勝利の辛島、先発転向で3勝も救援再転向の松井。層の薄さは否めない。右腕の明大・入江の1位指名も検討されたが、最速155キロ左腕に未来をかけた。

過去2年は外野手の辰己、内野手の小深田を1位指名。今年は7人中6人で投手を指名し「完璧に近いドラフト。点数をつけるなら141点。イシイです」と満足感をにじませた。「スーパーピッチャーなので、僕みたいに怠けることなく、僕よりは勝ってほしいなと思います」。球史に名を刻む“黄金左腕”の系譜を紡いでいく。【桑原幹久】

▽楽天三木監督 早くイーグルスのユニホームを着て投球している姿を見たい。将来エースになってもらって、プロ野球界、世界のプロ野球界を代表するプレーヤーになってほしい。