阪神近本光司外野手(25)がV逸を阻止する意地の一打を放った。同点の8回に右前にしぶとく落とす2点適時三塁打。負ければ15年連続でリーグ優勝を逃す一戦で粘りを見せた。ドラフト1位指名の近大佐藤は、外野で起用するプランもある。充実の外野陣へ、18年ドラフト1位が存在感を示した。

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近本は願いを込めながら、打球を見上げた。「とにかく『落ちろ! 落ちろ!』と」。左腕福の116キロカーブを捉え損ねたが、フラフラと舞い上がったボールは右翼前で跳ねた。寒空の甲子園は、一気に熱を帯びた。負ければV逸の一戦。本拠地ファンの前で、意地を見せた。

迷わぬフルスイングが勝敗を分けた。ここ最近は芯で捉えた当たりが野手の正面を突くことが多かった。「(捉えるのは)芯じゃなくてもいいのかなと思ったので、しっかり振り抜くことが大事だなと。あとは『どうにでもなれ』という気持ちで打ちました」。浅めにシフトしていた中日外野陣。打球が上がった瞬間、右翼滝野は1歩後退してから前進してきた。しっかり振り切ったからこそ相手の初動を遅らせ、記録は2点適時三塁打となった。

念願の「キナチカ」初お立ち台となった。18年ドラフトで指名された同学年の同期コンビ。新人イヤーからともに1軍でプレーし、切磋琢磨(せっさたくま)してきた仲だ。木浪がチームのコロナ禍で9月下旬に離脱。「ちょっと僕が元気なかったんですけど、聖也が帰ってきて。あいつがよく話をしてくれますし、今日もそういう話をした。あいつも本当に頑張ってくれているので、僕も元気を出してやっていかないとと」。木浪の復帰後はともにマルチ安打と、バットでも呼吸を合わせる。

先輩として、かっこいい姿も見せた。前日26日のドラフトでは同じ淡路島出身の東洋大・村上頌樹投手(22=智弁学園)が5位で指名された。2人は高校入学から地元を離れ、縁あってチームメートとなる。「こうやって関西に戻ってきて野球ができる。地域の人にもすごく支えてもらったというのは去年思った。2人で一緒に淡路島、関西を盛り上げていけるように『一緒にやっていきましょう』と言いたいですね」と、メッセージも送った。

ドラフト1位の近大・佐藤は、外野手起用プランも挙がっている。近本らと競い合うことで、外野の層も確実に厚くなりそうだ。近本、木浪ら若い世代がチームを背負っていく存在。お立ち台では「残り試合、この2人でチームを引っ張っていけるように頑張っていきます」と、ファンに力強く宣言。若い力が猛虎を底上げしていく。【奥田隼人】