阪神の2軍内野守備走塁コーチに就任する田中秀太アマスカウト(43)と、同投手コーチに就任する久保田智之プロスカウト(39)が13日、兵庫・西宮市内の球団事務所で会見を行った。

矢野監督体制で2年連続12球団ワースト失策。谷本修球団副社長兼本部長(55)は、あの“下柳グラブ投げ事件”を引き合いに田中氏に熱い指導を期待した。

久保田氏は自身の経験も踏まえ、伝説の最強リリーフ陣「JFK」の後継者育成を誓った。

   ◇   ◇   ◇

田中新コーチへの期待を語る谷本副社長が、“あの事件”を持ち出した。

「(1軍の)控えの内野手のレベルは、本当にもう少しということですね、ピッチャーにグラブを投げつけられるくらいの、と思われるくらいの危機的なレベルにあると思っています」

引き合いに出したのは07年10月1日、横浜戦での一件。遊撃田中のミスにより、先発下柳剛がグラブを地面にたたき付けた伝説の事件だ。それを持ち出したのも、大きな期待の裏返し。「苦い経験をしたからこそ、伝えられることもあると思っています。当時のチーム内の厳しさとか、常に優勝争いをするチームのピリピリ感とかは、経験したものでないと伝えきれないと思っております」。03&05年のV戦士でもある田中氏に、経験値に基づいた熱く厳しい指導を求めた。

「ピッチャーにグラブを」のフレーズには田中氏も苦笑いだったが、16年ぶりVへ1軍控え野手や2軍若手のレベルアップは不可欠だ。矢野監督体制となって2年連続の12球団ワースト失策改善は急務。田中氏も強い覚悟で臨むつもりだ。「数が12球団ワーストということですから、今まで以上に厳しくやらないといけない。言ってみたら、これ以上悪くなることはないのでね。前を向いてやるしかないと思っています」。基礎の守備練習に時間をかける大分・明豊や、沖縄・興南のボール回し練習。アマスカウト時代に見て学んだことも指導に生きそうだ。

確かな眼力で梅野、小幡ら才能ある選手の発掘、獲得に力を尽くした。「横田みたいな選手が出てきたらいいなと」。担当したOB横田慎太郎氏(25)は、脳腫瘍の後遺症による視力の影響により、昨年惜しまれつつ引退した。だが、練習に真摯(しんし)に取り組み、誰からも愛された“愛弟子”はプロ野球選手の理想像。ファンを喜ばせる鉄壁ディフェンス陣を作り上げる。【磯綾乃】

◆下柳グラブたたき付けVTR 07年10月1日、横浜での横浜戦。先発した下柳は5点リードの5回1死一、二塁で、二遊間のゴロを遊撃秀太がグラブからこぼすと、感情を爆発させた。マウンドでしゃがみ込み、背中からひっくり返り、グラブを左手で地面にたたきつけた。さらに満塁で遊ゴロが併殺崩れになって1点を失うと、再びグラブを投げつけた。テレビでは引きつった秀太の顔が大映しされるなど、味方野手陣も凍り付く大暴れ。自身10勝目を挙げ、チームもクライマックスシリーズ進出を決めたが、試合後は「あんなことやっちゃいかんわ。みんな一生懸命やってるのに。申し訳ない」と猛省した。5回で交代させた岡田監督は「暴れすぎたから代えたんや」と苦笑いだった。