巨人が昨季の4連敗から雪辱を期す日本シリーズ。下馬評はソフトバンク有利の中、8年ぶりの日本一を目指す戦いが開幕した。原辰徳監督(62)の思考や、チームの話題にフォーカスする巨人担当による日替わり連載「G-Zoom」をお届けします。

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「当選メール見せて下さい」。9月中旬。ナイキのスニーカー「ジョーダン3×FRAGMENT(フラグメント)」の発売日。某ショップの入店抽選に当選。メールに記載された入店時間に向かい、整理ナンバー順に並んでいた。

90年代後半の「エアマックス狩り」以来のスニーカーブーム。“事件”は数人前で起きた。スタッフと若者がもめている。本人確認のできるものがなく、クレジットカードもないときた。周囲から「替え玉」と聞こえた。フラグメントは、ストリートウエアのゴッドファーザーと言われる藤原ヒロシ氏によるデザインプロジェクト。ましてジョーダンとのコラボ。若者は「もういいです」。有効期限の切れた免許証をスタッフに渡す荒技に出て、そのまま列を抜けた。

私が入店すると、マイサイズの28センチは既に売り切れ。27センチ以下しかなかった。それも“事件”だが…。店を出ると、今度は“狩り”。泣く泣くアパレルのみを購入した私のショッピングバッグを見た数人が寄ってきた。アジア系の若者。遠慮せず、袋をのぞき込み「スニーカー買い取りさせて下さい。あれ、お兄さん靴は?」。「ないです」。

整理番号100番台でも28センチが買えない…。販売数が少ない上に“ビッグネーム”とのコラボ。価値は高まる。転売され、いわゆる“プレ値”が付く。アパレルブランドのOff-White(オフホワイト)がコラボしたジョーダン1は、定価約2万円のところ、約70万円で取引されたこともあった。

紳士たれの球団にも「スニーカーヘッズ」はいる。巨人の昨年の優勝旅行はハワイだった。元木ヘッドコーチ、坂本は世界的に有名なスニーカーショップ「Truest」を訪れた。坂本はスタッフから「Are You Sakamoto?」と声を掛けられた。興奮したスタッフは店の公式インスタグラムのストーリーに、19年のセ・リーグMVPと紹介した。

スニーカーが世界を結んでいる。ダイナマイト慎吾こと石川は約400足のコレクションを所持するスニーカーマニア。日本未発売の「オフホワイト×ジョーダン1」を所持していると聞いた時には、今までの取材人生で一番声を上げた。おのおの“イケテル”スニーカーで足元を固めている。

世界中が狙うレアスニーカー。当選確率は10%未満とも言われる。

だから前向きに捉える。

ホームで2連敗した巨人の日本一への“当選”確率は25%。

チャンスはまだある。私も、数少ないレアスニーカーで足元を固め、第3戦以降に足を踏み入れる。【栗田尚樹】