特命記者・里崎智也氏(44)が盗塁の中身を深掘りする里崎式「真の盗塁王」をテーマにプロ野球の盗塁を分析する。今回は(1)周東の躍進(2)近本の成長(3)平成以降のスプリンター(4)伝説の盗塁王、と4項目を分けて考える。【データ担当=伊藤友一・多田周平、構成=井上真】

<1>周東の躍進 シーズン終盤に13試合連続盗塁の記録をつくったソフトバンク周東の走力が圧巻だった。代走による盗塁1をのぞく盗塁49が基準点は、2位西川(日本ハム)に7差をつける。注目は追加点。

里崎 追加点だけを見ても、周東の70は、2位西川に26ポイントもの大差をつけています。基準点でも1位、追加点でも1位、文句なしの総合ポイント119での圧勝。真の盗塁王です。

今季とは試合数が異なるものの昨年のセ・パと比較しても、トップの金子(西武)が基準点41(追加点39)の総合80。120試合でたたき出した周東の数字は出色だ。

里崎 1点差以内で33回成功(3回失敗)が大きいですね。対照的に西武は外崎が10回成功(5回失敗)、源田が14回(6回)と、機動力が結果に結び付かなかった。一概には言えませんが、周東の盗塁の質はチーム成績に好影響を与えていたのは間違いないですね。

<2>近本の成長 昨年ブレークした近本は、今季も意欲的に走った。

里崎 近本は昨年の反省を生かして、内容が良くなっていると言えます。基準点は30で、追加点も33をマークしています。昨年の追加点が13でしたから、これは大きな成長です。盗塁死が15→8に半減しています。1点差以内の盗塁も19回成功(4回失敗)、7回以降も失敗なし。積極性も継続しています。来年がますます楽しみですね。

<3>平成以降のスプリンター ひときわ輝きを放つのがセのスプリンター、赤星(阪神)だ。03年から3年間はいずれも60オーバーの基準点をマークしつつ追加点も高いレベルを示している。03年の総合148ポイントは今季の周東119ポイントと比べても、突出ぶりが一目瞭然だ。

里崎 この時の赤星は素晴らしいです。1点差以内での43回成功(8回失敗)が群を抜いていますが、三盗が14個というのも見事というほかないです。

<4>伝説の盗塁王 平成以降の俊足打者を見て圧倒されていたが、データ班が調べた昭和の伝説の盗塁王がはじき出した数字には度肝を抜かれた。1972年の福本(阪急)の基準点105だけでも驚異的だが、1点差以内の盗塁が69回成功(16回失敗)に至っては、企画している85回という数の多さが際立つ。ゆえに、追加点138も、平成以降のスプリンターの実績が色あせて見えるほど。総合ポイント243を突きつけられては、改めて日本を代表する盗塁王の偉大さを実感せずにはいられない。

<真の盗塁王ポイント>

◆いかにチャンス拡大に貢献した盗塁かを、盗塁時の状況を精査することで、区別する。個数という単一の指標だけではなく、点差、イニングなどを加味したポイント制で評価するのが里崎式。

◆具体的には、7回以降の盗塁、点差、三盗・本盗、けん制死などを加味する。失敗やけん制死はマイナスポイントとなり、点差が開いた時の盗塁は0ポイントなどの条件をつける。

◆代走での盗塁はカウントしない。出塁と盗塁をセットで評価するのが里崎式の特徴。出塁する力量を含めての盗塁という考え方による。