男の意地だ。阪神陽川尚将内野手(29)が、泥臭い一撃で2連勝を導いた。

同点の6回2死一、二塁で三遊間を割る決勝タイムリー。佐藤輝明内野手(22)の大フィーバーで控えに甘んじる7学年上の先輩が、この日初めてスタメン落ちしたドラフト1位新人の代役起用に結果で応えた。チームは2度目のカード勝ち越しで貯金を3とし、6日ぶりに単独首位に浮上。6日からは今季初の甲子園で、2年連続セ界王者の巨人を迎え撃つ。

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陽川の執念が、打球に乗り移った。1-1同点の6回2死一、二塁。中日先発小笠原の119キロカーブに食らいついた。「何とか抜けてくれ-」。思いが通じたかのように、打球はしぶとく三遊間を割った。二塁走者マルテが激走のホームイン。中日ベンチはリクエストを要求したが、陽川はセーフを確信していた。判定は覆らず、値千金の決勝打。「しっかり来た球に対応していこうと。(マルテが)走ってくれてよかったです」。今季初スタメンで大仕事を果たし、二塁ベース上でにっこり笑った。

昨季は37試合にスタメン出場し、8本塁打と存在感を見せた。一気のレギュラー奪取を狙った8年目だったが、佐藤輝の加入とフィーバーで出番が激減。開幕からベンチを温め続けた。だがこの日、打率1割台の怪物ルーキーが9試合目で初めてスタメンを外れ、代役で出番が巡ってきた。「自分の今持っている力を出すしかない。常にいつ出てもいいように、練習から考えてやっていました」。この日も早出特打を行うなど開幕後も徹底準備の毎日。気負いもあってか、初回の好機は見逃し三振に倒れたが、同じ2死一、二塁で同じ轍(てつ)は踏まない。プロで7年やってきた先輩の意地を、ここ一番でさく裂させた。

試合は近本の先頭弾後、ミスが絡んで追いつかれ1-1の膠着(こうちゃく)状態が続いていた。矢野監督は「重いムードを陽川があそこでかえしてくれたおかげで、流れがくる1本になった」と絶賛。「ずっと状態もよかったですし、使いたいと思っていた。勝負どころで1本打ってくれたんで、いい仕事をしてくれました」。開幕2戦目には本塁打もマークした。少ないチャンスをものにする、そんな男が普段ベンチにいることが、層の厚さを物語る。

2連勝で今季2度目のカード勝ち越し。6日ぶりの単独首位にも返り咲いた。6日からは今季初の甲子園で巨人を迎え撃つ。ヒーローは「昨年やられっぱなし(8勝16敗)だったので、今年はやりかえすしかない」と大暴れを約束。佐藤輝にレギュラーを譲ったつもりはない。【中野椋】

<今年の陽川の歩み>

◆4番で発進 21年初実戦の2月4日紅白戦に白組の4番右翼で出場し、4回の第2打席で初安打。沖縄・宜野座キャンプ中の実戦は5試合4番を務めた。

◆好調を維持 キャンプ中の実戦は出場10試合で打率3割4分5厘、1本塁打。オープン戦でも3割5分7厘で1本塁打。レギュラー取りを猛アピールした。

◆公式戦初打席で1号 開幕2戦目の3月27日ヤクルト戦に途中出場し、回ってきた9回の今季初打席で長谷川から左中間へ本塁打。ベンチ前で会心のゴリラポーズを披露した。

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