阪神藤浪晋太郎投手(26)はヒーローインタビューの途中、絶妙なトークで笑わせた。佐藤輝の場外アーチに話題が移ると「ちょっと引きましたね。さすがに」と冗談交じりにニヤリ。「横浜スタジアムのあそこに場外を打ったのは見たことがなかったので、ベンチで引いてました。全員、ドン引きでした(笑い)」。ドラ1ルーキーをたたえ続ける余裕が頼もしかった。

主役の座こそ後輩に譲ったが、価値ある今季初勝利だ。寒空から雨が降り注ぐ中、1回は2四球で2死二、三塁、3回は2四球1安打で1死満塁とされた。それでも簡単にホームを踏ませない。3回2死満塁では5番宮崎から外角低め152キロで見逃し三振を奪い、「腹をくくって思い切って腕を振るしかないと思って投げた」と納得した。

4回からは「タイミングが合っていなかった」ワインドアップをセットポジションに変更。7回を7奪三振4安打2失点だ。昨季途中から自身22戦ぶりの白星を手にして「なんとか勝ちをつけてもらって良かった」。これでDeNA戦は通算14勝3敗、横浜スタジアムでは7連勝となった。

絶不調を脱するまでの数年間、寝ても覚めても野球を考え続けた。ある年の正月には母方の実家に帰省した際、壁に飾られていた写真に目を奪われた。祖母が大切に保管していた14年度タイガースカレンダーの5月コーナー。プロ1年目の投球フォームに「肘の使い方が違う。今はここまで肘を引けていない」と反省し、新年早々フォーム修正に乗り出したこともあった。

泥臭くもがき続けた。苦悩の数年間は今、心と技術の礎となっている。少しピンチを招いたぐらいでは揺らがない強さがある。試合後、矢野監督は「すごく堂々として見える」と評価。動じない。粘る。背番号19に新しいイメージが定着しつつある。【佐井陽介】

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