全日本大学野球選手権が7日、神宮球場、東京ドームで開幕する。4年ぶり5度目出場の石巻専大(宮城、南東北)は同日、神宮球場で天理大(奈良、阪神)と初戦で激突する。今春に優秀選手賞を獲得したエース左腕・斎藤智哉(4年=米沢中央)と最速148キロ右腕・渋谷祐太郎(3年=築館)が、左右の「2枚看板」として勝利に導く。東北勢では富士大(岩手、北東北)、東北福祉大(宮城、仙台6大学)も出場する。

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石巻専大をけん引する左右の両輪が、勝利のために腕を必死に振る。左腕・斎藤は「先頭打者を出すとピンチになる確率が高くなるので、回の先頭打者を必ず抑えるという意識を大事にして投げたい」。制球力を武器に、最速139キロの直球と変化球3球種で打者を翻弄(ほんろう)。加えてピンチにも動じない、打者の内角を突く強気な姿勢で真っ向勝負する。

今春はリーグ32度の優勝を誇る東日本国際大(福島)がコロナウイルスの影響でリーグ戦を出場辞退。昨秋2位で優勝候補の東北公益文科大(山形)戦は「勝たないと自分たちの全国が見えてこない。ストライク先行でチームにリズムを作れた」と、8回1失点の粘投で勝利に貢献した。今季は計4試合に先発登板し、投手陣の柱を担った。大学最終学年でつかんだ初の全国舞台。「0点で抑えていれば負けることはない。点を取られない投球を目標にしていきたい」と奮闘を誓った。

真っすぐが売りの右腕・渋谷は「直球で強気に押すスタイルを存分に発揮できれば最高。“4年生のために”という思いを持って臨みたい」。昨秋は中継ぎで今春から先発に転向。序盤は登板直前の調整に苦労したが、斎藤からキャッチボールや着替えをする時間を教えてもらい、準備万全で登板に臨めるようになった。「智哉さんは自分が投げ終わった後に、ほめてくれる時もありますが、その日の注意点を簡潔に教えてくれる先輩。支えになっています」と感謝を伝えた。

同大は主に1週2日間のリーグ戦にこの2人が先発。継投策で1勝、1勝を丁寧に積み上げ、公式戦マウンドには計6人が上がった。「リーグ戦の最初は自分がやらなきゃという気持ちだったが、後ろにも心強いリリーフ陣がいる。1人や2人ではなく、全員でつないで勝つという気持ちでいます」と渋谷。東日本大震災から10年の今年。被災地の思いを背負って全国の頂を目指す。【相沢孔志】

○…野手陣は最優秀選手の小林純也内野手(4年=聖和学園)が引っ張る。リーグ戦前までは1打席ごとに技術と意識を修正して打席に臨んだが、今春は内容が悪くても自分の打撃を貫いた。調整法も確立し「感覚的にバットを振る回数は100、200は増えた」と体力面で自分を追い込んだ結果、規定打席到達者でチームトップの打率3割6分の好成績に結びつけた。全国での目標は「初戦で負けたくない。出たからには勝って、全国的に石巻専修大という名前を知ってもらえるような試合をしたい」と言葉に力を込めた。

◆渋谷祐太郎(しぶや・ゆうたろう)2000年(平12)7月26日生まれ、宮城・大崎市出身。小学3年時に清滝ファイターズで野球を始める。築館高を経て、石巻専大では2年秋にベンチ入り。3年春に最多勝を獲得。右投げ右打ち。178センチ、82キロ。家族は両親、姉、祖父母。

◆斎藤智哉(さいとう・ともや)1999年(平11)12月10日生まれ、福島・喜多方市出身。小学1年時にけやきスポーツ少年団でソフトボールを始め、喜多方二中で野球に競技転向。米沢中央高では2年夏に県4強。石巻専大では1年春からベンチ入り。左投げ左打ち。176センチ、77キロ。家族は両親と弟3人。