球史に名を刻むまで、あと1本と迫った。ヤクルト村上宗隆内野手(21)が6回、先頭で打席に立つと、フルカウントから3球連続でファウルと粘り、右中間席へ34号ソロを放った。これでプロ通算99号。今季中に100号に到達すれば、89年西武清原和博の21歳9カ月を抜き、史上最年少記録となる。チームは引き分けに持ち込まれたが2位に再浮上した。

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村上はフルカウントとされてから、内角高め、外角低め、内角高めと、直球で厳しく攻められた。大振りせず、3球すべてファウルにした。9球目。甘く入った134キロチェンジアップを逃さず右中間席へ。「先頭打者だったのでとにかく出塁することを考えて打席に入った。くらいついていった結果が本塁打になって良かった」と、表情を崩さず雨が降りしきる神宮のダイヤモンドを回った。

「優勝チームの4番になりたい」と強く意気込んで臨む今季。その願いに手が届く位置につけ、より闘志を強く燃やす。2カード連続の負け越し後に迎えた7日阪神戦の試合前には、指揮官がナインの前で熱く語った。

「自分のことをしっかり理解して、自分の足元をしっかり見つめて周りのチームメートを信じ、一枚岩でいったら絶対に崩れることはない。絶対に大丈夫。これはしっかり自信を持っててください」

負けが続いたときはベテラン青木がミーティングを開催するなど、常に高い士気を保ってくれた。村上も「自分もそういう気持ちでいる」と改めて実感した。13日中日戦の9回は、納得のいかない判定に指揮官が激しく抗議。最後はその高津監督がなだめるまで、村上はベンチの先頭で、仲間とともに悔しさをあらわにした。チーム一丸の精神を日に日に強くしている。

9回3点差を追いつかれても、ベンチの先頭に立ち続け、声を出して仲間を応援。引き分けが決まると、ぼうぜんとグラウンドを見つめた。「今はタイトルより優勝したい気持ちが強い。個人の目標は気にしていない」と自身のことは二の次。いかにチームのために打てるか-。貪欲に勝利を追い求めた結果が、通算100発目になる。【湯本勝大】