「ゴッドハンド」。ドラフトが訪れる度に、話題を集める。球界屈指の「ゴッドハンド」と言えば、西武渡辺久信GM(53)。監督を務めた09年ドラフトでは、花巻東・菊池雄星(現マリナーズ)、翌年には早大・大石達也を2年連続の6球団競合の末に交渉権を獲得した。

今も伝説として、語り継がれるが、幸運を引き寄せるための験担ぎも万全だった。菊池を獲得した09年は、ドラフト前夜に岩手・花巻の地酒「南部美人」を飲み、当日は花巻東のスクールカラーでもある紫色のボールペンを携帯。最初にくじを引き、右手で封筒をつかんだ。

大石を獲得した10年には、早稲田カラーのえんじ色のパンツをはき、ドラフト会議に出席。抽選の順番は最後だったが、CSファーストステージ敗退後、1人旅に出掛けた際に立ち寄った長野・善光寺で購入した数珠をつけた右手で当たりクジをゲットし「衝撃です」と笑った。

森友哉を獲得した13年は単独指名に成功し、抽選はなかったが、験担ぎは抜群のインパクトだった。ドラフト前夜、スカウトの食事会の席で用意されたお酒は、幻の焼酎の1つとされる「森伊蔵」。当時、球団本部長だった鈴木葉留彦氏がこの日に合わせ、持ちこんだものだった。

ドラフト会議後、鈴木氏はご満悦だった。「何で森伊蔵かわかる? 『森いいぞ』『森いくぞ』っていう意味もあるんだよ。かばんに入れていたから、本当に重かったよ」と笑顔で指名の舞台裏を告白した。数々のドラマを生むドラフトだが、その裏側にもドラマがある。【久保賢吾】