楽天が、名より実をとった。支配下で7選手、育成で3選手を指名。

世間的には名前をあまり知られていない選手を並べた印象があるが、石井一久GM兼監督(48)をはじめ、球団一体のリサーチで、未来の主力選手を掘り起こした。

ロマンがあふれる。1位の昌平・吉野創士外野手は高校通算56発を誇り、無限の可能性を秘める。同2位の愛知大・安田悠馬捕手は身長185センチ、体重105キロの力自慢。高校時代は“青ゴジラ”との異名がつき、指揮官も「打撃では誰でも持っていないものを多く持っている選手」と評する。育成2位の日大藤沢・柳沢大空外野手は身体能力の高い右打ち外野手。広島鈴木誠也外野手のような大化けもある。

指揮官は4度目のドラフト会議で、今季が兼任監督では初参加。スカウト陣には「僕が監督やっているから、というのは全くない」とスケール感を重視させた。ネット上では「独自路線すぎる」「予想外」との声も見られるが「名前がすごく分かる方が想像しやすいかもしれないですけど、スカウトの皆さんは雨が降っても暑い日でもいろんな選手を見てくれている」と自信をのぞかせる。

監督として目の前の勝利を求めながら、勝負どころで若手を起用し、経験を積ませる場面も多く見られた。「監督でいえばバリバリの即戦力を10人欲しいですよ」と笑いながら「中・長期的にチームを支えられる選手の方が今は必要という判断を、監督じゃない僕が判断した」と下位で即戦力投手をそろえつつ、将来性に重きを置いた。異色を放つ指名は、現場とフロントの責任を一身に背負う“全権監督”だからこそ実現したとも言える。

球団は今季で創設から17周年と歴史は浅い。指揮官は「FAはそんなに動くものじゃない。野球ではドラフトがチームの一番の補強。いろんな役割を1回のドラフトではふさげない」とぶれずに、継続的な血の入れ替えを進める。30歳前後がプロ野球選手のピークと考える石井GM兼監督の脳内には、輝かしい未来がはっきりと描かれている。【桑原幹久】