日本ハム宮西尚生投手(36)が、入団から14年連続で50試合登板を達成した。

0-0の8回2死走者なし。マウンドで待っていた栗山監督から「長い間投げてくれて、ありがとう」と声を掛けられ、ボールを受け取った。危なげなく3球で投ゴロに仕留めると、静かに左拳を握った。続けて「あんなにウルウルした目で言われたら、こっちも感極まった」と涙を拭った。

今季限りで退任する栗山監督への“逆サプライズ”だった。登場曲を長く愛用してきたLADY BiRD feat.ソンイ「Sweet Song」から、さだまさし「道化師のソネット」に変更。前回登板の翌日、栗山監督が宮西にボールを手渡したいという思いを伝え聞いた。指揮官が好きな、さだまさしを2、3日聞き続け「監督にリンクする」と選び抜いた。

波乱に満ちたシーズン幕開けだった。ヒザ痛の影響もあり、極度の不振から逆転を許すシーンが目立った。前半戦には主戦場としていた「勝利の方程式」から外れる屈辱を味わった。「何をやっても悪循環。この14年で相当苦労した」。記録が途絶えることも仕方がないと、腹をくくった。「9、10月には打たれる気がしない」まで本来のパフォーマンスを取り戻した。

「絶対に目指したい」と掲げていた岩瀬仁紀が持つ15年連続へ、王手をかけた。最終戦セレモニー後には、今度は栗山監督へ偉業達成の証しであるボールを手渡した。「感謝を込めて、来年50試合登板して、今年の50試合が意味があったなと思えるようにしたい」。涙を越えて、偉大な境地へと歩き出した。【田中彩友美】