ENEOSは、キャプテンのバットが勝利を呼んだ。1-1の7回2死満塁、川口凌主将(25=法大)が決勝の適時打を放った。「抜けてくれー」と念じたとおり、ボールは右前に。一塁ベース上で、よっしゃーとばかり、力強く拳を握った。3回には先制打を放っており、計2安打2打点。競り合いを制した。

昨年の経験が生きている。5年ぶりに都市対抗に出場。川口自身は初めての舞台だった。「正直なことを言うと、都市対抗に出ただけでホッとしてました」と打ち明ける。だが、2回戦で敗れたことで、心に火がついた。「優勝したホンダに負けて、ENEOSはひとつ勝っただけ、出ただけで満足してはダメだと思いました。上を見たい。優勝の景色を見たい。勝った音を聞きたい」と日本一への思いが増した。

個人的にも、悔しい敗戦だった。タイブレークとなったホンダ戦の延長10回、最初の打者に起用されながら、見逃し三振を喫した。結局、表で1点しか奪えず、裏の2失点でサヨナラ負け。「フラッシュバックすることもあって。あのことがあったから、毎日、しっかり練習しようと思うようになりました」。言葉よりも、背中で引っ張るキャプテンと自覚する。グラウンドを離れても、普段の生活からきっちりやって、チームをまとめていった。

大久保秀昭監督(52)は「昨年よりも一段とたくましさを兼ね備えている。練習の姿勢、野球に取り組む野球愛は申し分ない。ただ、まだまだやってくれると思います。信頼の置ける選手です」と目を細めた。8強進出は、4強まで進んだ14年以来7年ぶり。13年以来の日本一の景色を見るまで、勝ち続ける。【古川真弥】