己を超え、海を越える。ソフトバンク千賀滉大投手(28)が23日、キャリアハイの更新を誓った。福岡・筑後市のファーム施設で自主トレを公開。今季中に海外フリーエージェント(FA)権を取得する見込みで、メジャー志望のエース右腕は、日本球界最後のシーズンとなる可能性がある。長年の夢をかなえる置き土産として「今までの数字を上書きする」と力強く意気込んだ。

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タイトル獲得には「相手があることなので」と、興味を示さない。千賀の頭には「今までの数字を上書きする」ことしかなかった。雨が降りしきる福岡・筑後の肌寒い昼下がり。「そこ(キャリアハイ)は僕の中ではマスト。絶対にやり遂げます」。人生の分岐点になりそうな22年。自然と言葉に熱がこもった。

今オフは総額6億円で、選手自身が契約の見直しや破棄ができる「オプトアウト」付きの年俸変動制5年契約を結んだ。今季中に海外FA権を取得する見込みで、メジャー挑戦を前提とする異例の待遇。再三メジャーへの思いを語ってきた右腕にとって、日本球界ラストになる可能性もある今年にかける思いは強い。

「今年、やらなくちゃいけないという気持ちがすごくある。全力でぶつかっていきたい」。持つ力の全てをかけ、キャリアハイを置き土産に、長年の夢につなげるつもりだ。

主な最高成績は13勝(17~19年)、防御率2・16(20年)、227奪三振(19年)とどれもハイレベル。最速161キロの直球に代名詞「お化けフォーク」で、育成入団から日本のエース格にまでのし上がった。「自分のやってきたことへの数字は残っている。そこに対しての数字は超えられるように頑張りたい」。歩んできた道に自信がある。己を超えて世界に羽ばたけば、最高のシナリオになる。

年明けは沖縄・宮古島で自主トレを行い、21日に福岡へ戻ってきた。この日は室内練習場でランニングやキャッチボールなどで調整。「順調にきているのは間違いないと思います」。19年以来3度目の開幕投手についても「その資格を得られるように、丁寧にいきたい」と意欲を見せた。夢を現実にする22年が始まった。【只松憲】

◆オプトアウト 長期契約の途中でも選手が契約内容を見直すことができる条項。設定した成績を残したり、年数を経過すれば、より高い条件で契約を結び直したり、FAとなり他球団と交渉することもできる。昨年6月にジャイアンツ傘下3Aの山口俊が、オプトアウトの権利を行使して退団。巨人に復帰した例がある。