タイガース元年ユニホームで開幕G倒ダッシュだ! 阪神は4日、巨人との共同プロジェクト「伝統の一戦~THE CLASSIC SERIES」で両チームが1リーグ初年度の1936年(昭11)当時のユニホームを復刻着用すると発表した。4月1日からの東京ドーム3連戦と、5月20日からの甲子園3連戦の計6試合。「伝統の一戦」の始まりとされる36年秋の優勝決定戦から86年の時を経て、復活する「大阪タイガース」が牙をむく。

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86年前の「大阪タイガース」がよみがえる。復活するグレーのユニホームの胸に、黒字に黄色で縁取られた「OSAKA」の5文字が輝く。中央に黄色と黒の縦ラインが入ったシンプルなデザインに、重みを感じる。まだ戦前の昭和11年のプロ野球草創期。ここまでさかのぼって戦闘服が復刻されるのは球界初だろう。着用モデルを務めた近本選手会長は「伝統あるユニホームに恥じないよう、ファンの皆さまに熱い戦いをお届けします」と約束した。

対象は4月1日からの東京ドーム3連戦と、5月20日からの甲子園3連戦の計6試合だ。巨人も当時のホーム用の白いユニホームを復刻。「伝統の一戦」の始まりとされる36年12月の「洲崎の決戦」が現代で再現される。1リーグ初年度の秋のリーグ戦で阪神と巨人が勝ち点で並び、東京・江東区にあった洲崎球場で3試合制の第1回プロ野球日本一決定戦を開催。阪神は3連投した沢村栄治の前に1勝2敗で涙をのみ、そこから90年近くに及ぶライバル物語が始まった。

36年は阪神の伝説のスターたちが躍動した。初代4番は後に監督を務める松木謙治郎。秋は「物干しざお」と呼ばれた長いバットで活躍した初代ミスタータイガースこと、藤村富美男が第1号の本塁打王に輝いた。中軸の景浦将は投打二刀流の大活躍。6勝0敗、驚異の防御率0・79で、最高勝率と最優秀防御率のタイトルを獲得した。華々しい猛虎時代の幕開けだった。

今季はこの復刻シリーズの1回目が、開幕3カード目での巨人との初対戦。オールドファン垂ぜんの対決は、シーズンを占う意味でも重要な3連戦だ。開幕ダッシュに弾みをつけるか、その逆になってしまうのか…。昨年は14年ぶりに勝ち越したが、V奪回を期す巨人も戦力アップしていることだろう。週末金土日の戦いで、両チームとも開幕投手が折り返す対戦も予想される。まずは同じ東京で、86年前に洲崎で敗れたリベンジを果たしたい。先人たちの思いを背負った大阪タイガースが、春の陣を熱くする。【石橋隆雄】

◆阪神の巨人戦 2017試合を戦い、中日戦の2018試合に次いで多い。通算844勝1099敗74分けで勝率4割3分4厘。2リーグ分立後のシーズン勝ち越しは阪神11回、巨人56回、相星5回。昨季は13勝9敗3分けで、07年以来14年ぶりに勝ち越した。阪神選手の最多出場は吉田義男425試合で最多本塁打は掛布雅之の70本。最多登板は山本和行161試合で勝利数最多は村山実39勝。

◆1936年(昭11)秋の阪神と巨人の優勝決定戦 創設1年目のプロ野球は、春にリーグ戦、夏にトーナメント大会をそれぞれ行い、秋に7球団で「第2回日本野球選手権」を行った。9月18日から、それぞれが独立した6大会を挙行(リーグ戦4、トーナメント戦2)。6大会の優勝チームにそれぞれ勝ち点1、優勝が2チームの場合には同0・5を与えた。この結果、タイガース(現阪神)と巨人が勝ち点2・5を獲得して並んだ。12月9日から東京・洲崎球場で行われた優勝決定戦で阪神と巨人が対戦。阪神は1勝2敗で巨人の初優勝を許した。

<36年の伝統の一戦>

◆幕開けはルーズベルト勝利 記念すべき初対戦は7月15日、名古屋市の八事山本球場で行われ、阪神が8-7で競り勝った。「野球で最も面白い」と呼ばれる、ルーズベルトゲーム。永遠のライバル関係を暗示する船出だった。なお「阪神8-7巨人」のスコアはこれ以外に、74年後の10年5月2日(甲子園)の1試合だけしかない。

◆初の甲子園はノーノー黒星 通算2試合目は9月25日、宿敵を初めて聖地に迎えた。阪神若林忠志と巨人沢村栄治が投げ合い、0-1で敗戦。松木謙治郎、景浦将らが凡打の山を築き、沢村に許したノーヒットノーランは、日本プロ野球初となった。第1戦の「8-7」に引き続き、歴史的な名勝負が展開された。

◆V決定戦で涙 秋のリーグ戦、トーナメント大会の結果、両軍が勝ち点2・5で並び優勝決定戦を行った。1勝1敗で迎えた第3戦、阪神は4回に守備の乱れから逆転を許す。5回から登板の沢村に対し、終盤に再三チャンスを作ったが無得点。そのまま押し切られ、巨人が初優勝。「洲崎の決戦」と語り継がれるこの戦いで、両軍のライバル関係が決定的になった。

◆大阪タイガース 阪神電鉄を基盤とし、1935年(昭10)12月「(株)大阪野球倶楽部」が発足。球団創設に際して企業名は表に出さず、メジャー流に都市名を冠することを念頭に「大阪タイガース」を名乗った。40年9月にチーム名を「阪神」と改めたが、47年から60年まで再び「大阪タイガース」に戻した。この間37年秋、38年春、44年、47年と4度の優勝。藤村富美男や別当薫らを擁したラインアップは「ダイナマイト打線」と呼ばれた。61年から現球団名の「阪神タイガース」となった。

〇…阪神は復刻ユニホームのビジター3試合でのユニホームスポンサーとして、「auじぶん銀行」が協賛することも発表した。5月20日の甲子園でのホーム初戦では試合開始2時間後までに入場した入場券を持つ来場者全員に復刻ユニホームデザインをモチーフとした「OSAKA扇子」がプレゼントされる。今後は復刻ユニホームのグッズも発売する予定。