日刊スポーツの名物編集委員、寺尾博和が幅広く語るコラム「寺尾で候」を随時お届けします。
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安住さん、ありがとぉ! あなたが日刊スポーツの紙面をみたリアクションを北京五輪の現場で取材する記者に伝えたら大変喜んでおりました。これを励みに、また気合のこもった熱い記事が送稿されてくることでしょう。
9日朝、TBS系「THE TIME」(月~金曜午前5時20分)でMCの安住紳一郎アナウンサーが冬季五輪フィギュア男子の羽生結弦がSPに臨んだ様子を報じる9日付の日刊スポーツの特別ポスター紙面を番組で紹介した。
安住さんは本紙1面を広げて「一瞬(新聞の)ミスプリントかと思ってドキッとしたのですが、裏1面を抜き取ると、縦1面、羽生選手のスタート前の横顔が写された大きなポスターになっています」と紙面を抜き取る実演を交えて紹介したのだ。
さすが人気のアナウンサー。拙者にも多数知人からの反響があってうれしくなった。少年野球を指導するある人は「紙面がおもろいと言ってたので、朝から家内が騒いで駅売りで買ってこいと言うたんです」と早朝から興奮気味に電話をかけてきた。
拙者は前回08年北京での夏季五輪の取材現場にいたが、あまりいい思い出がない。市内でパンダをモチーフにした大会マスコット「福娃(フーアー)」のストラップを買い込んだら、それが偽物だった時点でがっかりだった。
それまで北京、上海、蘇州に渡っては、中国を代表する伝統芸能の京劇などの舞台に触れて現地関係者と交流を続けるなど、大国の深い歴史に畏敬の念を抱いていた。でもこと五輪では、さまざまなマイナスな出来事に遭遇し、中国に対するイメージは反転する。
前回の夏季五輪は、北京市が環境改善を開催の公約に掲げたが、実際はほど遠いと感じた。工場などからの汚染物質の排出量を半減したと聞いても信用できず、実際は車の排ガスと改修工事で上空はいつも曇った。それでも新聞には連日「太陽」マーク。とても青空の国際基準を満たしていないと思った。
中国食材の安全性も問われた。毒入りギョーザ、段ボール肉まん、残飯油、汚染ウナギ…。ネガティブな話題ばかりが駆け巡った。マスクを着用しろ、歯磨きは水道水でなくペットボトルを買ってと、そんな声が飛び交った。
今回も新疆ウイグル自治区の人権弾圧が批判されているが、当時もチベット独立を求める暴動が政治的問題になって絡むなど、大変な北京五輪だった思いが強い。なんだか現地での生活は気が重かったのを覚えている。
それでも北島康介(競泳)、伊調馨、吉田沙保里(レスリング)らの金メダルに、内村航平(体操)ら若手が銀メダルで続いて熱狂した。ただソフトボールが初の金メダルに輝くが、野球の星野ジャパンはまさかのメダルなしに終わったのは強烈な負のインパクトを残した。
「金しかいらない」と旅立った日本代表監督の星野さんだったが「監督だったわたしの力が足りなかった」と自らを責めた。そして敗因を聞かれて「違う世界で野球をやってるようで、初めての野球に巡り合った」と暗に審判のジャッジのばらつきを批判するのだった。
日本代表の取材では、なぜか取材陣も日の丸を背負っている錯覚に陥りがちだ。それは新聞人だけではないかもしれない。今になって冷静沈着さを失った自身の未熟さだったと当時を振り返ることができるが、それができないのが“若さ”ゆえだろうか。
現場記者の奮闘はさておき、トップアスリートが勝者と敗者のコントラストを描くのは無情だが、それを報じる活字からはその裏で演じたヒューマンストーリーの熱気が伝わってくる。まだまだドラマはこれから、勝負の世界は何が起こるかわからない。あしたの朝も、何とぞごひいきに…。(敬称略)



