えっ、もう胴上げやっちゃった!? 阪神矢野燿大監督(53)が23日、沖縄・宜野座キャンプで胴上げされて3度、宙に舞った。恒例の1日キャプテンとして登場した糸井嘉男外野手(40)、西勇輝投手(31)が音頭を取ってサプライズで「予行演習」。目標達成を前もって祝い、現実を引き寄せるという考えの「予祝」と呼ばれるもので、17年ぶりの優勝へチームが結束した。なお、予定した広島との練習試合は雨で中止。

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恐らくプロ野球史上初であろうキャンプ胴上げが沖縄で行われた。朝から雨が打ちつける宜野座ドーム。まさかの光景が繰り広げられたのは練習前のミーティング中だった。1回、2回、3回…。選手たちの手で両手両足を伸ばした破顔の矢野監督が宙に浮く。「いやまあね、うれしいサプライズで、気持ちよかったです」。まだシーズン前。前代未聞の胴上げで、笑顔と拍手の輪が広がった。

仕掛け人は1日キャプテンを務めた糸井、西勇だった。円陣の中心で「予祝」と書かれたTシャツを着た西勇が「ただ1つ出来てないことがあります」と切り出した。息ぴったりの掛け合いで糸井が「これちゃいますか?」と練習着を脱ぎ、Tシャツの「胴上げ」の文字を披露。これに矢野監督もジャンパーを脱ぎ捨て、背番号88のユニホーム姿で「ありがたく頂きます!」とナインに身を委ねた。

予祝は、あらかじめ喜び事を達成したとして前祝いし、現実を引き寄せようとするもの。矢野監督が就任当初から呼び掛け、チームにも浸透している。サプライズ胴上げの発案者である糸井は「いい雰囲気だったでしょ? もちろんシーズン後半には絶対にやり遂げたい。そういう意味で予祝は、(実現を)引き寄せられると僕は思っている」と真顔で力説した。

矢野監督はキャンプイン前日に電撃的に4年目の今季限りでの退任を表明。物議を醸した。退路を断って臨んでいる指揮官は「嘉男と勇輝に感謝。そういう思いで戦ってくれるのは、俺にとってありがたい」と2人に感謝した。「優勝、日本一のチャンピオンフラッグを持った選手たちが、歩いていく姿を俺が一番後ろで見るというのが、いつも描いている」。歓喜の秋はイメージ済みで、ナインと一緒に胴上げの予行演習もやった。あとは、17年ぶりのリーグVを引き寄せるだけだ。【桝井聡】

○…胴上げは球団の公式ツイッターで動画で公開され、賛否両論のコメントがついた。肯定派は「とてもいい雰囲気。秋に本当に優勝して、この時の映像が使われるようになったらいいな」「これが今年の10月ぐらいにペナントで実現できるように頑張って応援するしかないね」「これでこそ矢野阪神! 矢野監督最後のシーズンに向けて、チーム状態良好!」など。

一方で否定的な意見もあった。「そんな暇あったら練習しろ!」「ちょっとおふざけにも程がある。真面目に練習してる他球団に失礼」「阪神ファンとして恥ずかしいので、削除してください」という厳しい反応から、「筋金入りの阪神ファンやけど、これはちょっとやり過ぎでは」「こんなことしてたら笑われますよ」と当惑気味のファンの声も。批判に対しての批判が出るなど、おめでたいはずの予祝も歓迎ムード一色にはならなかった。

◆予祝 あらかじめ喜びごとを達成したとして前祝いし、現実を引き寄せようとすること。矢野監督は就任1年目の19年2月に「優勝しました」と宣言し、20年は予祝をさらに具体化。シーズン前に日本一を予祝して、新型コロナウイルス感染拡大で活動休止中に知人と日本一になった際の「優勝監督インタビュー」を受けた。